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お兄さん、お姉さん、男の子、女の子、おじさん、おばさん、おじいさん、おばあさん。
列に並んでいる人の年齢だって、服装だって、ばらばら。
とても同じ品物を買いに来た人なんて思えない。
「学園長これって……?」
「全て、ゆきさんの本を買いに来た方達です」
あたしの見間違いじゃない。
夢じゃない、妄想じゃない。
現実ではいつも売れ残っていた。
誰もあたしの事なんて見てくれなかった。
でも、でも……。
異世界の人は見てくれている!
期待してくれている!
「すげーな!」
「う、うん……」
やだ、なんか手が震えてきた。
すごい嬉しいぞ!
なんかいろいろあったけど、異世界へ来て良かったって思うよ……。
そうやって感慨深い気持ちに浸っていた最中。
「はーい! 奇跡の聖女が描いた絵画集の販売を開始しますー!」
なるほど、漫画なんて単語は存在しないから絵画集なんだね。
……ん?
「き、きせきのせいじょ……?」
「ええ」
いや、ええじゃなくて。
学園長なぜ冷静なんですか。
「……どういう意味?」
「先の円形闘技場での戦い以降、ゆきさんは天使を降臨させた聖女と、民の間では有名になってますよ」
確かに、あたしって普段学園の敷地外へ出る事もないからねえ。
都の様子がどうとか正直よく分かってなかった。
けども、ここまで凄い事になってたなんて!
「あ! 聖女だ!」
う、並んでいる人に見つかった。
ひええ、全員こっちに来るっ!!
「おおお! 間近で見られるなんて」
「聖女様、どうかお導きください」
「ありがたや……、ありがたや……」
「えええええええっ!!!」
あやややややや。
瞬く間に囲まれちゃったよ!!
あたしに向かって祈ったり泣いたりしてる人いるし、こりゃたいへんだ……。




