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エレナ……、お願い無事に帰ってきて……。
「俺はまだこの状態には慣れてねぇ」
「ふーん、その割には随分馴染んでいるみたいだけど?」
「気を張ってないと頭がどうにかなりそうになるんでな」
「そうなんだ」
「だから一撃で終わらせる」
「いいわね。観客も退屈しなさそうだし、決まれば一瞬だし」
リゼットの周囲には光の帯のようなものが出来ていて、それらは全て彼女の手に集まっていく。
「いくぞ!! うおおおお!!!!」
「暑苦しいわね。でも嫌いじゃないわあなた」
エレナは杖に溜めた魔法力を、リゼットは手に溜めた魔法力を、相手に向けて発射する。
巨大な魔法力は空中でぶつかり合うと、突風と光の粒を無造作にばらまきながら押し合いを始めた。
「やるじゃない……!」
「ったりめぇだろ!! 俺とゆきの二人分だからなぁぁーー!!!!」
リゼットもエレナも、表情は苦しそうにしながら我慢比べを続けている。
力はほぼ互角……!
百合バーストで強化してもここまでやってくるなんて!!
そして僅かな時間、魔法力の拮抗が続いた後。
お互いの魔法力が混ざり合うと、一気に膨張し周囲を純白の音の無い世界へと染め上げていった。
何も見えない、誰が居るかも分からない。
あれだけ騒いでいた観客の声も一切聞こえない。
ただ白く、果てなく、儚い世界。
…………。
…………。
…………。
…………。
そんな状態がしばらく続き、やがて世界は色と音を取り戻していく。
凄まじい力を放った、リゼットとエレナの立っている姿も見えてきた。
「楽しかったわ」
「ぐっ……、これでも駄目か……」
周囲の景色が元に戻った瞬間、エレナは膝をついた。
うそ……、あれでも勝てなかったの……?
「エレナ!!!!」
幸いけがはなかった。
でもエレナの息は荒いし、百合バースト発動後の全身を包む光も消えてしまっている。
「さすがに疲れたわ。私も残り一発分しか魔法力が残ってない」
それに対してリゼットは手のひらをかざして魔法力の集中をすると、手には再び光の粒が集まっていくのが見えた。
ここまでやっても駄目だったなんて!
もう一度百合バーストを……!
「はぁっ、はぁっ……」
だめ、出来ないよ。
こんな状態で無理に魔法力をあげたら、エレナが壊れてしまう。
なにかいい方法……、いい方法は……!!




