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7-5

「うおおおお!!!」

「やああああ!!!」

 あたしは意を決し、学園長に教えられたことをした。

 どうやらエレナもその様子だったらしく……。


「…………」

「…………」

 あたしとエレナは、お互いにぎゅっと抱き合った。


「……なんなのこれ」

「こ、これでいいのか」

「うぅ……、恥ずかしい」

 こんな人が居る前で抱きつくなんて!

 あぁ、恥ずかしいっ!

 はずかしいはすかしいはずかしいよぅ……。

 リゼットは手に力を溜めたままあきれてるし、観客もなんか変な雰囲気だし。


「ゆきも同じだったとはな」

「う、うん。あたしはそれに追加で絵を描けって言われた」

「学園長……、何考えてるんだ」

 学園長がこの戦いの前に言ってた事。

 それは、他の誰かを抱きしめる練習をしておく事だった。

 もちろん、普段から誰かに抱きつくわけにもいかなかったから、ぬいぐるみでやってたけれども……。

 まさかエレナも同じ事言われてたなんて。


「で、いつまで抱きあってるわけ?」

 リゼットはあきれつつも冷静にそう問いかけてきた。

 でもそうは言われましても、あたしらはこれしか習ってないし……。

 ここからどうしろって言われても、……どうしよ?


「…………///」

「…………///」

 うぅ、ほんとうにどうしよ……。

 すごい恥ずかしい、からだあつい。

 なにかしなきゃって思うけども何もおもいうかばないよぉ……。


「観客も貴族もしらけてるけど? どうしてくれるのこの空気」

 だけどなんだろう。

 なんかよく分からないけど、すごくどきどきしてる。


「……し、しらねえよ」

「……でもね、エレナ」

 前世での恋愛経験は皆無だった。

 だからこうやって抱き合う事なんてなかった。


 ぬいぐるみ相手でも恥ずかしいなぁとはおもってた。

 でも実際に抱き合って分かった。


「エレナ、すごくあったかい」

 恥ずかしさもあるけど、なんだろう不思議な感覚。

 ……こんな気持ちになるなんて。


「ちょ、な、なにいってやがる!!」

 照れたエレナかわいい。

 あったかいエレナかわいい。

 ほんのすこしいいにおいがするエレナかわいい。

 かわいい……、かわいいなぁ……。


「……なるほど。そういうわけね。でもあなたに、その力が使いこなせるの?」

 リゼットが何か言ってるけど、そんなのあたしにはどうでもよかった。

 今はもっと抱き合ってたい。

 なんだろうこの気持ち、あたしおかしくなっちゃったのかな。


 でもいいや、むずかしいこと考えるのはやめよう。

 いまはしょうじきになろう。


「んふぅ……」

「んんっ……」

 そしてあたしは、エレナのくちびるを奪った。


 その瞬間、かつてミカエルと戦った時と同じくエレナの体に黄金色の光がほとばしる。

 しかも今回はその現象に加えて、背中から光が強く出ていてまるで翼のようになっていた。


「エレナ……、いつも迷惑かけてごめんね」

「いや、いいんだ。俺が好きでやってるだけだからな」

 そっか、そういうことだったんだね。

 この、恥じらいと相手を思う気持ち。

 百合バーストは、この気持ちが大事だったんだね。


 あたしは少し名残惜しさを残しつつ離れると、エレナはあたしの頭を軽く撫でてくれた。

 そんなことしちゃぁ……だめだよ。

 本当に戻れなくなっちゃう……。


「リゼット、悪いが俺らはここでは死ねない」

「……全く、今日は驚かされてばかりね。前線で戦っててもここまで驚いた事ないのに」

 その後エレナは、リゼットの方へ向いて杖に魔法力を集中させると……。


「いくぞ!」

「きなさい」

 そのまま真っすぐに歩いていった。

 あたしはそんな彼女の背を、無事を強く願いながら見送った。

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