6-5
あたしは最後の手段を行う覚悟を決めた。
それは禁じ手だってのは分かっていた。
でも、もう我慢できない。
あたしとエレナは、ミカエルの両親を魔法で追い返そうと試みようとする。
百合バーストでエレナの魔法力をあげれば、こんな奴らなんて……!
「おやめなさい。ゆきさん、エレナさん」
そう思った矢先、学園長に手を握られてしまう。
すると不思議と力が抜けていき、その場に座り込んでしまった。
「このままでは事態は収拾せず、状況は悪化する一方です。セレライン卿も、ここであまり大人げない態度をとっては、学生に示しがつきませんよ」
「ならばこの怒り、どうすればよいのだ?」
あたしらだって、怒ってるよ!
うぅ、でも体に力が入らない……。
「こういうのはどうでしょうか。ゆきとエレナ、彼女たちに戦わせるのです。あなた方が選んできた者と。それで勝てば今回の件は不問にすればよいでしょう」
あたし達が戦う……?
この貴族が選んできた人と……?
「正気か? 見習いだぞ? 実戦経験皆無なんだぞ?」
「構いません」
そ、そうだよっ!
まだ授業でイメージトレーニングとか、座学を少しやった程度なのに!
学園長何言ってるの……。
「それに、彼女らをこのまま見逃すという選択肢は持ち合わせていないのでしょう?」
「…………」
「ならば、彼女達にチャンスを与えてはどうでしょう?」
「……なるほどな。学園長、くえない人よ」
今まで怒りを露わにしていたミカエルの父親は、何かを悟ったかのように冷静さを取り戻すと、となりにいた母親も一つ咳払いをして同じような態度をとる。
この時、あたし達をちらちらと見ていた事が、ちょっと気になってしまう。
「よかろう、こちらはこれから人選を始める。用意が出来次第また連絡する」
その後にそう学園長に告げると、エントランスから外へと出て行った。
今まで居た野次馬達は、この珍事がひとまず治まったのを察したか、蜘蛛の子を散らすようにエントランスから離れていった。
誰もいなくなった学園エントランスにて。
「二人とも庇ってくれてありがとう」
学園長は笑顔でそう言ってくれた。
でも、どこか困り顔だった。
「学園長……、すまん」
「ごめんなさい」
あたしは、やってはいけない事をやろうとしてしまった。
それをすれば、どんな結末になるかは容易に想像がついたはずなのに、かっとなった。
その事がとても怖くて、情けなくて……うぅ。
「ですが、大変な道を選びましたね……」
めがしょぼしょぼしてきたよぉ……。
でもここで泣いちゃだめなんだ。
「恐らくは、現役魔法少女が来るでしょう」
「……こうなったらやってやる。誰だろうと勝てばいいんだろ?」
エレナは腹をくくったみたい。
あたしもしっかりしなきゃ……。
「こっちには隠し玉があるしな」
「うん!」
「百合バーストですか……」
確かにあの力を使えば、ひょっとしたら勝てるかもしれない。
もうこれしかないんだ。
この時、学園長が遠い目をしていた。
だけど、何故そうしていたかはよく分からなかった。




