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50-5

 それからしばらくの時が経ったある日。

 寂れた教会内にある控えの部屋にて。


 …………。

 …………。


 今あたしは、結婚式をしようとしていた!

 しかもエレナと!

 きゃー///


「……ねえエレナ」

「なんだ?」

「緊張するね///」

 もう胸がドキドキしててやっばいよー!

 一応前にも着た事あるとはいえ、やっぱウェディングドレスって憧れとかあるしさー!


 そ・れ・に!

 あたしの横には、大好きなエレナがあたしと同じ純白のドレス姿でいるって事!!

 きゃーもう!

 たまらないよね!!


「今更なんでだよ……」

「えぇっ、エレナは緊張しないの?」

「だって、ゆきは俺の嫁だし家族なんだから当然だろ」

 いやん///

 そんな真顔で言わないでよはずかしいなあ!

 でもそうなんだよね、あたしはエレナのお嫁さんだもんね。


「まー、しかしあれだな。教祖やってた頃とは思えないくらいの規模だな」

「う、うん。そうだね」

 世界変革の魔法によって、百合になってた世界が壊れて元に戻った。

 まあその結果、みんな何事も無かったかのように百合熱から冷めてしまって、あたしの本の売れ行きはかなり下がったし、聖百合教も解散して今じゃ孤児院をやってる。

 昔の名残で教祖様って呼ばれる事もあるとはいえ、持て囃されるのは得意じゃなかったから、今くらいがちょうどいいと言えばいいんだけどね。

 でも、すごい落差を感じてちょっと戸惑っている。


「エレナは不満……? ただの女の子のあたしじゃだめ?」

「いんや、ゆきはゆきだ。俺はゆきの全部が好きだ」

「えへへ、ありがとう」

 エレナったら!

 もうどきどきしちゃいっぱなしだよー!


「失礼します。それでは入場してください」

「うん、ありがとうね」

「おう」

 今回の付き添い役、つまりブライズメイドはなんとひながやってくれる。

 いやー、最初は驚いたよー。

 だって、あの戦いが終わってからひなが目覚めたのはいいんだけども、セフィリアの事をママって言うくらいしか記憶がないみたいだったし。

 背景をいろいろ説明したら、とりあえず監視付きだけども何のお咎めもなしだし。

 今はエレナが連れて来た子たちと一緒に仲良くやってる。


 というわけで、そんなひなについて行った。

 対して長くもない廊下を歩き、教会のチャペルへ入る扉が開かれるとあたしたちは手をぎゅっと握って中へ入っていく。


「…………」

「…………」

 オルガンの音色が流れる厳かな雰囲気の中、あたしとエレナは中央の通路を抜けてゆっくりと歩いていき……。


「今日は快晴。ふふ、この良き日に式を挙げられた事に感謝ですね」

 神父役は、なんとセフィリアだ。

 ひなと分離した後に意識を取り戻したセフィリアは、最初は自分のやった事に罪の意識を感じてあたしたちから離れようとしたんだけども、どうにか説得してもらい今は一緒に孤児院を切り盛りしている。


「それでは……。新郎エレナ、あなたはゆきを永遠の伴侶とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「おう、誓うぞ」

 エレナは相変わらずぶっきらぼうだけども、いつも通りの元気で返事をしてくれた。


「新婦ゆき、あなたはエレナを永遠の伴侶とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「はい、ちかいます」

 きゃーー!

 いっちゃった!

 誓っちゃったよー!

 いやんてれるうううう///


「それでは、誓いの証を」

 おっと、もっと大事なのがあったね……。


「…………」

 エレナが何も言わず、笑顔のままあたしのベールをあげてくれた。

 えっとえっと、あたしもあげるんだっけか。

 あげないとできないものね、うん。


「…………」

 今までベール越しでよく分からなかったけど、エレナちゃんとお化粧もしてくれてる。

 すごい綺麗……、感動しちゃうね。


 そう思いつつ、あたしは目を閉じた。


「ん……」

「んん……」

 そして少し間を置いた後、くちびるに優しい感覚が伝わってきた。

 百合バーストとか関係ない、本当に大好きな人からの誓いの証。

 うれしい……。とってもうれしいよ。


「えへへ」

「どうした? 大丈夫か?」

「ううん、嬉しくって涙が出ちゃっただけ」

「そっかー」

 エレナがにやにやしてる。

 嬉しいって事なのかな?

 そう思っていた最中。


「おらよっと!」

「うわあっ!」

 ちょ、ちょっとー!

 エレナったらあたしを抱きかかえるなんて!

 ずいぶん力持ちだね……。

 ってそうじゃない、いやん恥ずかしい///


「このまま孤児院まで連れってやるよ! ゆきがドレスの裾踏んづけたらかっこ悪いからな!」

「もー! エレナったらー!」

 そう言うとエレナはあたしを抱きかかえたまま、教会の外へと抜け出した。


 青く澄んだ空が広がる。

 あたしとエレナを祝福するかのように、白い鳥が飛んでいった。


 今日はいい日だね。


                         ~ 完 ~

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