6-3
それから数日後。
「大変だ! ゆき!!」
あたしは今日もまた絵を描いていた。
そんな時、突然エレナが部屋の扉を勢いよくあけると、血相を変えてあたしを呼んだ。
いつも何事にも動じないエレナが、今日はいつにも増して慌てている。
珍しい、何があったんだろう。
「うん? どしたの?」
慌てている理由を聞こうとしたあたしだったが……。
「いいから来い!」
「え、ええええええーー!!」
エレナはあたしの手を引き、走り出してしまう。
あたしは半ば引きずられる感じで、外へと出て行った。
そうやって到着したのは、学園入り口にあるエントランスホールだった。
既に何かあったのか、ものすごい人だかりが出来ている。
「お、おい。あれを見ろ」
「何だろ……?」
あたしは人だかりをかき分けつつ、囲まれている何かを確認しようとした。
「どういう事だね学園長」
「私の娘が大けがをしたのよ! どうしてくれるわけ!!」
そこには、いかにも高級そうな服を着た紳士と、こちらもいかにも高級そうなドレスを着た女の人が、学園長と話していた。
でも、高級そうな二人はとても穏便な様子ではなさそうだ。
「我が愛娘を傷つけた者を差し出せ、火あぶりにしてくれる」
「火あぶりなんて優しすぎますわ。ありとあらゆる辱めを受けてから、八つ裂きにしてやらないと!」
「お待ちくださいセレライン卿。今回の一件は試験中に起きた事故、学生の責任ではありません」
愛娘を傷つけた……?
試験中の事故……?
「何を馬鹿な事を言っているのだね学園長」
も、もしかしてそれって……。
「確かに、この学園は未来の救世主を育成する為にある、厳しい授業や危険な演習もあるのは分かっているし、許容済みだ」
この感じ、雰囲気……。
「だが、ミカエルはあれからずっと目を覚まさないのだぞ! いささか、やりすぎなのではないか?」
「そうよ! うちの娘……、大切なミカエル……うぅっ……」
げげっ!
やっぱそうじゃん!!
あたしの力でパワーアップしたエレナが病院送りにした、ミカエルの両親じゃん!!
母親の方は泣きだすし、父親はものすごい剣幕だし、学園長は終始困ってる感じだし……。
「ともかく、ミカエルを傷つけた者を差し出していただきたい!」
「断ります」
「そちらがそういう態度ならば学園長! あなたに責任をとって貰いますぞ!」
今は学園長があたし達を守ってくれている。
でも……。
「……んー、かなりまずいな」
「うん」
ミカエルの家は貴族で名家でとにかくすごいらしい。
そんな大切な娘さんを傷つけた。
しかも聞いた感じ、試験からずっと目を覚まさないとか!
そりゃ怒るよね……。
やはりここは潔く名乗り出るしかないのかな。
エレナや学園長に迷惑かけられないよ……。
「構いません。この学園の責任者として、私が処罰を受けましょう」
「なんと! 学園長気でも触れたか!」
えぇ!?
そんな!
学園長そこまでしなくても!
駄目だ、このままじゃ取り返しがつかなくなっちゃう。
名乗り出ろ、出るんだあたし……。
そう思いながら、重い足をゆっくりと前へ向かわせようとした時だった。
「俺がやった」




