50-2
エレナ視点。
「あの、女神様」
「ゆき、どうしたの?」
「もういちどだけ、あたしに口づけをしてください」
「ほお……」
「みんなにもっと百合百合してるのを見せたいんです。そうすればきっともっと分かってくれると思うから……」
「うふふ、そうですね」
ゆきがゆきじゃなくなった……。
なんなんだ、この胸の中でグルグルと回る嫌な感情は!
「はふぅ……」
「んん……」
「もうやめろ……、やめてくれ……」
俺は自分でも気づかないうちにそう声を発していた。
「んんっ……」
「ん……」
「いやだ……、ゆき! ゆきーーー!!!!!!」
何もかもがぐしゃぐしゃになって、どうしようもなくなって。
あぁ、そっか。
俺はゆきが好きだったんだな。
だから、そんなゆきをとられてしまったのが悔しいんだな。
でも、それに気づいたところで何かが変わるわけでもない……。
「諦めなさい。もうあの子は……」
「くそっ……、くそっーー!!!!!」
悔しい……。
悔しい悔しい……。
悔しい悔しい悔しいくやしいくやしいくやしいくやしいくやしいくやしい!!!!!!!
「はぁっ……」
「ふう……」
ううぅ……、ゆきぃ……。
なんなんだよこれ……。
冗談でもわらえねえよ……。
「泣いたって何も解決しないわよ」
「うるせえ……、うるせえんだよ……」
黙れよ。
俺だって我慢してるんだよ。
でもな、どんなに堪えたって涙がとまらねえんだよ……。
だめだ、どうやっても割り切れる気がしねえ。
もうゆきが居ないなんてありえない。
「別にいいじゃない、今生の別れってわけでもないんだから」
あんなのゆきじゃねえんだよ……。
俺のゆきはな!
ひたすら元気で前向きで、絵描くのが好きで、教祖になるのも躊躇ってるような奴なんだよ!
「……なら存分に泣きなさい。悔しさも思い出も全部忘れるくらいに」
ならそうしてやる。
もうこんな思いはたくさんだ。
俺のやってきた事が全部無意味になるのなら、忘れたって変わらない。
そう思い、何もかもを諦めようとした。
その時だった。
「くっ……!!」
俺に見せびらかすように始めた口づけを終え、距離を離したひなとゆき。
そのひなが突然よろめきながら頭を抱えだしたのだ。
「効いてきたみたいだね、ひな」
「な、なにを……!!」
ひなは明らかに困惑していた。
俺も何が何だか分からなかった。
「ごめんねエレナ。こうするしかなかったの」
だが、ただひとつだけ分かっている事があった。
俺の方を見て話しかけたゆきは、普段のゆきだって事だという事だ。
「どういう事だよ……、説明しろよゆき!」
しかし、さっきひなと百合バーストしたはず。
あのままひなの魂に飲みこまれたんじゃなかったのか……?
「百合バーストは魂の共有……だったよね」
「お、おう」
「あたしはひなの魂と共有した事、あるよね」
「まあな、闇を解放した時だったよな」
だからそれがなんだっていうんだよ。
まるで理解出来ないぞ……。




