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50-1

エレナ視点。

「ゆ、ゆき……?」

 うそだろ、おい。

 なんでだよ……、どうしてなんだよ……。


「くそーーー!! 何でお前はいつもそうなんだよ!!!」

 前からこういう場面は何度かあった。

 あいつ、普段は戦いとか苦手とか言ってるくせに、いつも不安そうなのに、こういう時は自分を犠牲にしやがる。


「んっ……、んん……」

「ん……」

 ゆきとひながキスしている。

 しかも今までゆきがしていた百合バーストのように、一瞬だけくちびるをつけるのじゃない。


 …………。

 …………。


「なんでだよ……」

 ゆきは体を何度も震わせながら、ひなのドレスをぎゅっと握りしめている。

 俺にとってはあまりにも長く、苦痛で、不安で、やりきれない時間だ。


 …………。

 …………。


「うおおおお! もう見てられるか!! 俺のゆきに手を出すんじゃねえ!!!」

 そんな時間に絶えられなくなり、感情が爆発した俺は、ひなめがけて火球を放った。


「うおっ、な、なんだ!」

 だが次の瞬間、ゆきから眩い光が放たれた。

 光は俺が放った火球を飲みこみ、この世界全てを覆いつくしてしまった。

 俺は腕でどうにか視界を遮り、強烈な光から身を守る事は出来たが、周囲は真っ白になってしまい何も見えなくなってしまう。


 …………。

 …………。

 …………。

 …………。


 それからしばらく経った後。

 真っ白になった世界は、本来の色をゆっくりと取り戻していく。


「……おさまったか? って、おい」

 景色を見渡せるようになり、俺は真っ先にゆきの方を見たが……。


「ゆき、とっても素敵だよ」

「ありがとうございます。これも偉大なる女神様のご助力の賜物です」

 ゆきの衣装が……変わってる?

 青色だった部分は全てひなのドレスと同じ純白色に変化していて、首飾りや胸元やコルセット部分の星飾りも百合の紋章になっている……。


「さあエレナ、一緒に女神様を崇めよう?」

「うそだろ……」

 ゆきは、瞳に強い輝きを宿しながらそう言い、俺へと手を差し伸べて来た。


 その瞬間、俺はゆきがひなの手に完全に堕ちた事を悟った……。


「そしてあたしと一緒に百合を広めるんだ」

「ゆき……」

 人心掌握術?

 洗脳?

 そんなぬるいもんじゃねえ。

 さっきの百合バーストで、ゆきの魂はひなの意のままに書き換えられてしまったんだ。


「みんなも百合百合しよ?」

「…………」

 くそ、ここまでやってきて結末がこれかよ。

 俺はセフィリアどころか、ゆきすらも失ってしまった。

 なんでだよ、ちくしょう。

 こんなのってありかよ……。


「ねえ、どうするの?」

「あ? どうするってなんだよ」

「死ぬまで立ち向かうの? それとも服従するの?」

「…………」

 俺はかつての英雄の力を受け継いだ大魔法使いだ。

 だが、百合バーストが使えない。

 セフィリアも助かる見込みはない、ゆきも救えないしゆきと戦うのは出来ない。


「すまん、リゼット。お手上げだ」

「……そうね。賢明な選択よ」

 俺の物語もここまでか……。

 もう、諦めるしかねえのか。


「さあ、みんなで素晴らしき百合世界を広めよう」

 女神ひなは勝ち誇った笑顔で両手を広げながら、そう告げた。

 俺はその瞬間、圧倒的な劣等感を与えられた、完全な敗北を喫したような気がした。

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