6-2
「ところでゆきさん」
「はい」
「絵の方はどうなりましたか?」
「う、うーん……」
「あなたからいただいた絵を商会の方に見せたら好評でして、すぐにでも売りたいと言ってきているのですよ」
「ひっ」
「おお、ゆきの絵が売れるのか! すげーな!」
「う、うん。ありがとう。えっと、今少しずつ描いてます」
あの試験以降、授業は穏やかそのものだ。
そのせいか、絵を描く余裕も出来て少しずつ描き始めているけども。
完成にはまだほど遠い。
でも期待されている。
こんなの初めてだ、なんか嬉しいかも。
えへへ……。
「あとどのくらいで仕上がりますか?」
「うーん……。30日くらい?」
「それでは遅いですね。10日でお願いします」
え゛っ!
いやいやいやいや!!
そんなの無理だよ!!!
30日でも割と必死こいてやらないとなのに、10日とか寝ずにやっても出来ないって!
「ごめんなさい、ちょっとそれは……」
「それなら、まずは1枚の絵をまとめて本にして売ってみたらどうでしょう?」
なるほど、イラスト集ってわけかな!
だったら少しは速く出来そうかな……。
でも10日はかなりぎりぎりだけども。
「出来たら俺にも見せてくれな!」
「楽しみにしておりますよ!」
「う、うん」
よーし!
折角待っててくれている人もいるし、頑張らなきゃだね!
あたしはウキウキな気分で学園長の執務室を出て行くと、購買で絵の道具を一通り補充して自室へと向かい、すぐに描き始めた。
10日かぁ。
きっついよなぁ……。
でも、あんだけ期待してくれてる。
前世ではありえなかったのにね。
まぁ、試験もしばらくはないみたいだし。
二人の期待に答えたいから、しっかり頑張ろう!!
あたしは決意を新たにして、絵を描くことに集中した。
あれだけ言ってくれてるから、前世では成せなかった夢が果たせるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、日々描き続けた。
だが、あたしの平和で平穏な日々は長くは続かなかった。




