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「…………」
あたしは、百合の女神ひなに見下ろされていた。
「…………」
それは魔法力が圧倒的なのもあるんだけども。
魔法力なんか比べものにならないくらいの深い愛。
……自分でも何言ってるかわかんないし。
どうしたらいいかもさっぱりだけども。
ただ、圧倒的だ。
「ここから逃げられるなんて、期待しないでね?」
「!!」
「当たり前だよ。ひなとママを認めるまで逃がさない」
これで逃げるって選択肢もなくなっちゃった。
あたしは……立ち向かうしかない。
「勇者の剣! やああ!!」
だったら立ち向かうしかない!
気持ちで負けてたら勝てる戦いも勝てないよ!!
あたしはなけなしの勇気を振り絞り、剣を生成した。
体を捻らせ、ばねを生かして剣で女神ひなの腹部を切り裂こうとした。
しかし……。
「…………」
剣を……素手で受け止めた!?
そんな!
やばい、ひなも剣を生成して突き立ててきた!
当たる!!!
「うっ……!」
「これで2回目」
……さっきと同じだ。
ひなの剣はあたしの胸を貫いている。
だけど怪我や衣装の乱れも無ければ、痛くも無い。
でもだからといって喜べる場合じゃない。
実感はなくっても、あたしは確実に死に近づいているんだから。
あたしの魔法力が尽きて攻撃を受ければその時は……。
…………。
…………。
ううん、怖がるなあたし!
エレナやセフィリアとこれからを生きるんだ!!
こんなところで……、やられてたまるか!!
「勇者の槍!!」
あたしは身を引いてひなとの距離を置くと、ひなの剣の範囲外からでも攻撃可能な槍を生成した。
「やああ!!」
そしてそれを、ひなめがけて何度も突いた。
手や足の震えは実感してたけれども、それでも攻撃の手を緩めはしなかった。
だけども……。
「くっ……」
「3回目」
ひなはあっという間にあたしの懐に入り、あたしの腹部を剣で切り裂いてしまう。
それは、うんざりするくらい鮮やかな剣さばきだった。
…………。
…………。
負けるなあたし!
ここで負けたら……!
「勇者の幻影! そして螺旋槍!!」
今度はあたしの分身との連携攻撃だ!
分身にも武器を持たせて、どちらが本体で攻めてくるのか分からなくすれば……!
そんな思いを胸に、あたしはひなへ再び迫っていく。
分身を左方からけしかけ、本体は回転する槍を突き立てながらまっすぐ突っ込む。
あたしの分身の出来は良い、攻撃のタイミングもばっちり。
これなら……!
「…………」
ひなが剣をしまった?
あれは……、短剣……?
分身の方に大量に投げて……、分身が消された!!
だったらもう、このまま特攻するしかない!
この勢いと回転力なら、短剣なんか弾けるはずだ!
いっけええええ!!!!
「……哀れだね」
う、うそ。
ひなの体に当たったのに、螺旋槍が粉々に砕けて……!
「うぅ……」
「4回目」
……まただ。
またあたしのお腹に……、ひなの剣が刺さっている。
螺旋槍が砕かれて、あたしが驚いた隙にやられたんだ。
「あぐっ」
「……ようやく魔法力が無くなってきたみたいだね」
今はそんな分析なんかどうでもいい。
衣装はなんともないけど、刺されたところが熱くてちくちくして、すごく痛い……。
これって!
「はぁっ、はぁっ」
「終わりだね」
あたしの魔法力は尽きた。
次のひなの攻撃であたしは……!!
「さっきも言ったけど殺しはしない。ひなとママの愛の守護者として、そして人々にその愛を広める教祖として生きるの。その為の記憶と力をあげるから安心して」
ひながこっちへ……!
いやあ、こないで!!!




