48-1
「えっ?」
何?
今なんて……?
「ゆき! そこから離れろ!」
「ええっ? う、うん」
そんな大声で、いったいどうしたの。
あと少しだよ?
う、うーん。
でもさっき聞きなれない声したし……、なんか鬼気迫る感じだったからはなれよ。
そう思い、あたしは学園長から離れて再びエレナが居る場所へ戻った。
その瞬間だった。
「な、なんだありゃあ……」
「あれって!」
学園長の近くのベッドに寝ていた幼いひなが空中に浮くと、そのまま学園長を遮るように着地し、両手を広げた。
その様子はまるで、母親を必死に守る子供ような感じでもあった。
「ママをいじめる悪い奴。許さない」
「さっき学園長が抱いていたひなの人形……?」
「うそだろ、魂は入ってなかったはず」
そうだよ!
さっきだって返事はしてたけど、なんかこうたどたどしい感じだったし。
なんでこのタイミングで!
どういう事。
「……ようやく念願が叶いました」
「どういう事だ! 答えろソフィア!」
「ひなの魂をただ呼び覚ましても駄目だというのは、アルキメディスが実証してくれましたからね」
「…………」
「だから私は、ひなの魂を作ろうとした」
えええっ!?
魂を作るって……、そんな事出来るの……?
というか、作ったらそれってひなじゃないような気もするけども。
「……そんな事が出来るのかよ」
「ええ、理論上は可能です。膨大な魔法力さえあればですが」
「世界を変えた百合の光の力を……!」
「そうです」
「てめえ、嘘つきやがったな。ただの人形じゃねえ、ちゃんと意思もあるじゃねえか」
「確実では無かったから、敢えて言わなかっただけですよ」
う、うそ……。
世界を変えて、まさか魂まで作っちゃった……?
いつの間に……、というか百合パワー万能すぎない……?
「ねえママ、あいつら悪い奴だよね? ひなとママをやっつけようとするんだよね?」
「そうよ……、でももう守れそうにないの。ごめんね」
「ううん。ひなが守るの」
「ひな……」
ちょ、ちょっと!
ひなってそんな性格だっけ……?
ああそっか、学園長が作ったから、性格も思いのままって事だね。
って納得してどうするの!
「まずいぞ、ゆき」
「うん。やっつけるなんて出来ない」
「全くだ。俺も流石に手詰まりかもしれん」
「子供には流石に……」
「えっ?」
「えっ?」
「……何か勘違いしてないか?」
「いやだって、子供に手をあげるのはちょっとねえ……」
ほら、幼女だよ?
見た目だって目ぱっちりしてるし、さらさらロングヘア―でかわいいよ?
だから手出しにくいよねって事じゃないの?
「あー、まぁそれもそうだが、そうじゃあない」
「えっ、じゃあなんなの」
「世界を変える百合の力で作られた魂って事はだ」
「うん」
「その力がまるごとあのひな人形にはあるって事だ」
「ほおほお……」
「魔法力の数値で言うと……、1憶以上か?」
「えっ? ええええええええええ!!!!!」
な、なんだってー!
そんなのありなの?
い、いちおく……。まさに桁違いだね……。
あはは、やばいかも。




