6-1
最初の試験からしばらく経ったある日。
あたしはエレナを呼び、一緒に学園長の執務室へ行く事を決めた。
学園長の執務室にて。
「あの、学園長」
「なんでしょうか」
「試験の時、エレナのあの力は一体なんでしょう?」
あの時、エレナの魔法力は飛躍的に上がった。
だけども理由が分からなかったあたしは、学園長なら知っていると思い聞いてみたのだ。
「俺もあんなの初めてだったぞ? まぐれじゃないのか?」
「いやいや! まぐれで普段の150倍の力は出ないよ!」
「そういうもんなのか」
当のエレナは元々細かく考える性格ではないと、ウィーンへの借りを返した事で、全く気にしていない様子だ。
「いいでしょう」
学園長……。
やっぱり何かしっているんだね?
「結論を言いますと……。エレナさんのあの力はゆきさん、あなたが原因です」
「えぇ!」
え、あたし?
あたし何もしてないのに……。
な、なにかやったかなぁ?
「あなたはとびぬけた魔法防御力だけが自分の武器と思ってるでしょう?」
「う、うん……」
「実はあなたにはもう一つあるのです」
「なんだろう……」
「それは、特定の人物の力を一時的ですが大きく高める事が出来る。マジックバースト能力です」
ま、まじっくばーすと??
なんじゃそりゃ……。
座学の時もそんな単語習った事ないよ?
「ねえ、エレナは知ってる?」
「いんや? 聞いた事ないな」
「当然です。マジックバーストは珍しい能力で、扱えた者は数えるほどしか知りません」
そんなレアな能力だったのね。
おお、なんか人とは違うユニーク能力とか、異世界転生者っぽいかも!
「で、でも学園長。あたしエレナに何もしてないですよ……? そんなパワーアップする魔法なんて知らないですし」
そうなんだよ。
マジックバーストなんて、今初めて聞いたし。
というか、あたし魔法使えないままだし……。
「おや、気づいてませんでしたか。ゆきさんは、しっかりマジックバーストを発動するための儀式を済ませていましたよ」
「え?」
い、いつのまに?
儀式ってなんだろ……。
「エレナさんを愛しく思い、守りたいと強く願い、そして口づけを交わした」
「えええええええ!?」
そう言われれば……。
確かに試験前にすごくどきどきしてたし、ミカエルの攻撃から守りたいって思ってた。
そしてどさくさに紛れてキスもした……。
まさかあれが全部発動条件だったなんて。
そんな事……あるの?
「マジックバーストの発動条件は人それぞれですが、あなたの発動条件は特殊ですね」
「あー、あれかー……」
エレナも心当たりがあるらしく、遠い目をしながらそうつぶやく。
あっ、もしかして。
あたしと組めばウィーンに勝てるって言ってたのは、このマジックバーストがあるからって事?
ということは、学園長はあたしがその力が使えるって見抜いていた?
まじでかー……。
「あなたの描いた本から引用すると、さしずめ”百合バースト”と言いましょうか」
「ひええ……」
い、いいよ!
マジックバーストで!
いやだってこの世界で百合なんて言っても通じないし……。
てか学園長、ちゃんと本の内容覚えている……。




