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「エレナさん、魔法力を消費させる作戦でしょうが無駄ですよ」
「なんだと」
「現に魔法力は70%まで溜まりました。これが最後の警告です、ここから去りなさい」
「ちっ……」
うーんうーん。
あの鉄壁の防御を突破する方法……。
螺旋槍よりも貫通力のある攻撃は……。
でもあたしだけの力じゃ螺旋槍よりも威力の高い武器は出せないし、他に思いつかない。
エレナの魔法も組み合わせて使ったりしてるけど、結局防がれちゃっている。
これ以上の攻撃ってなると、百合バーストして魔法力あげるしか……。
だけども、そんな余裕もない。
ううん、諦めちゃ駄目だ。
考えろ……、何かきっといい方法があるはず……。
…………。
…………。
そうだ!
ひらめいたよ!
「エレナ!」
「なんだ? 百合バーストか?」
「ち、ちがうよっ! いい作戦思いついた! ちょっと耳かして!」
「お、おう……。妙に張り切ってるな。で、どんな作戦なんだ?」
「えっとね。ごにょごにょ……」
「ほほお、面白そうだな」
「でしょ?」
「でもかなり危ないぞ?」
「今はそんな事言ってられないよ! 早くしよう!」
「おう!」
あたしはエレナに耳打ちをして作戦を伝えた後、エレナの前に立つと……。
「勇者の螺旋槍!」
再び勇者の力で武器を生成し、強く地面を蹴って大砲へと突進した。
「先ほど防がれたのに、まだ分からないのですか? テジャトの魔法、ダイアモンド・シールド」
当然、さっきと同じ展開になる。
結晶状の盾があたしの螺旋槍を防いじゃう、勿論削れたり貫けたりする気配はない。
硬いものを削ろうとしているせいで、手も痛い。
でも!
ここからだよ!!
「そうだよ、このままじゃ突破出来ない」
「なら何故やるのです?」
「だからこうするんだよ!」
後ろに控えていたエレナから声がすると、あたしの螺旋槍に雷と風の塊が合わさった。
「やあああ!!! 貫けえーーー!!!!」
あたしの作戦、それは魔法剣ならぬ魔法槍!
武器も駄目、魔法も駄目、だったら組み合わせてみろっていうわけだ。
槍の回転速度もあがった。
だんだん押し込んでいく感じもしている。
おおっ、結晶の盾にヒビが入った!!
これはいけるかもっ!!
「なっ! 勇者の力とエレナさんの魔法が合わさって……!」
「風雷螺旋槍!! いっけええええ!!!!」
やった!
盾を破壊出来た!
よし、このまま本体につっこめーー!!!!
他のビットは魔法が間に合わなかったのかな?
あたしはそのまま大砲の本体に槍を突き立てる事に成功した。
「やあああああ!!!」
そしてそのまま、本体も一気に貫き通したあたしは、その勢いのままエレナが居る場所へ戻った。
「ど、どうだ!」
あたしは振り返った。
そこには、大きく穴の開いた大砲が、青白い火炎を噴出させながら爆発し崩壊していく様があった。
「はぁっ、はぁっ、や、やった!」
「すげえなゆき! 成功したぞ!」
「うんうん」
「でもよくあんな作戦思いついたな?」
「まあうん、たまたまだよ! あははは」
前世で見たアニメで、似たようなシチュエーションあったのを思い出したんだよね。
そんな事エレナに行っても分からなさそうだし、あたしの心の中に留めておこう。
「で、どうする? 頼みの武器はもうないぞ?」
「…………」
大砲は大破したよ。
もうこれで学園長には対抗する術はないはず。
「学園長、お願いです。どうかセフィリアを解放してください」
「……私はどんなに努力しても、ひなと結ばれないというのですか」
学園長も諦めたのかな。
涙目になりながら、うつむいてそうつぶやくだけだった。
「ゆき、頼む」
「うん」
あたしが学園長にキスをして、エレナが魔法を使えば元のセフィリアに戻るみたい。
ようやくこれで目的は達成されたわけだ。
……学園長をかわいそうとは思うけど、セフィリアが居なくなるのは嫌だ。
そう思い、あたしはゆっくりと学園長へと歩み寄っていく。
「…………」
あたしと学園長、お互いに触れる距離まで近づいた。
あとはキスするだけで全てが決着する。
その時だった。
「私のママをいじめるな」




