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あたしとエレナの試験は、本来ならば絶対に勝つ事に出来ないミカエルとウィーンのペアに打ち勝ち、満足な結果を得る事が出来た。
……はずだった。
「今回の試験は中止となります。よって、グランドリリィ決定戦進出者も落第者も無しとします」
あたし達が戦った後、試験会場はぼろぼろでとても使い物にならず。
また名家の娘であるミカエルの負傷もあってか、試験は中断となってしまった。
「…………」
「…………」
大けがをして、今はもう気を失ってしまったミカエルとウィーンは、学園内にある医務室へと運び込まれていってしまった。
「ゆきさん、エレナさん。ちょっとお話がありますので、至急私の執務室へ来てください」
「……はい」
「んだよ……」
確かにやりすぎた。
……で、でも!
相手がこっちを挑発してきたのが悪いんだよ?
別に頭へこへこしろなんて言ってなくって、エレナの杖を折ったりするのがいけなかったのに。
そう思いつつも、あたしと不満げなエレナは学園長へとついていった。
学園長の執務室にて。
「さて……、あなた方が呼ばれた理由はわかりますよね?」
学園長の顔からは普段の穏やかな笑顔はない。
真剣そのものであり、それがどういう意味なのかは想像は容易につく。
だけども、やっぱりあたしは納得が出来ない。
悪いのはあいつらなのに!
「元々あいつらが――」
そう思い、ミカエル達の不遜な態度を訴えようとしたが……。
「俺のせいだ。俺がやった」
「エレナ!」
エレナがあたしの会話に割って入るように、自らの非を認めてしまう。
「ミカエルさんは、この国でもかなり有名な貴族の娘なのですよ。このMA学園の活動にも協力的で、多くの援助をして下さいました」
たしかに、ウィーンをいつも引き連れているからね。
他のクラスの子も噂してたけれど、あたしと違って家柄がかなりいいみたいだし。
「彼女にも罪が無いわけではありませんが……、ほどほどにしてくださいね」
そんな名家の娘にもしもの事があれば……。
魔法少女としての実力以前に、貴族たちの私刑もありうるってことだよね……。
「はい……。すみませんでした」
「悪かった、気をつける」
きっとエレナはそこまで察したのかもしれない。
そう思うと直情的だったあたしの頭は冷えると共に、学園長に迷惑をかけた事に対して頭を下げた。




