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「う、うーん」
まさかの魔王がふたなりって……。
予想外すぎて、なんかこう、まあ、うん。
「それで結局、この世界は普通の世界と百合世界が混合した中途半端な状態が続いた」
……ひなが魔王に屈するってわけね。
うん。
本にしたら大炎上待ったなしだよね……。
「アルキメディスは研究の末に、ひなを蘇らせることに成功した」
「うん。そうだね」
「だがソフィアの行為や、眠っていた自身を覚ましたアルキメディスの身勝手な行動に失望したひなは、魔王と同じ魔法を使った」
「ふむ……」
「その結果、闇が生まれた。闇はたちまち広がっていき世界を飲みこんだ。百合なこの世界を戻すためにな」
そんな……。
世界を覆うとしていた闇が、実は世界を元に戻そうとしていたなんて……。
「勿論、民衆は何も知らない。だからこそ、世界を覆いつくそうとする闇に必死に抗った」
闇とは何か?
魔王とひなの間に何があったのか?
ひなが何故あそこまで歪んでしまったのか?
……それら、今まで知りえなかった真実が全て明らかになっていく。
この気持ち、なんだろう。
「そこで3度目の特異点が起きた。ゆき、お前だ」
「え、どういう事」
「ソフィアはお前の百合の力に目を付けた。だからお前を利用した」
そう言われれば……。
学園長はあたしが入学してからいろいろと面倒見てくれた。
魔法の勉強も手伝ってくれたし、作家活動だって協力してくれた。
あたしが魔法少女として、百合作家として成長するためなら、なんだってしてくれてた。
「でも、どうしてあたしを利用したの? 百合な世界を作るのにあたしが必要だったの?」
「世界を変える魔法は、膨大な魔法力が必要だった。とてもひとりでどうこうなる問題じゃない」
「……最初の特異点を起こした魔法使い、かなりの力の持ち主だったんですね」
「まあな、今の魔法少女たちでは想像もつかないくらいの高みにいたんだろうな。……で、その膨大な魔法力はどうやって集めるか?」
世界を自分の意のままに変えるなんて、魔法力いくつあれば出来るんだろう……。
エレナの言ってる感じだと、何百人何千人の力でもないと駄目じゃないんかな?
あっ!
もしかして……。
「あたしの作品……?」
「そうだな。魔法が使えない人には魔法力が無いわけではない。微量でも人数集まれば大きな力になる。だがそれだけじゃない」
「他にも条件があるみたいですね」
「ああ。老若男女、普通の人、魔法少女、全員の力の合わせてもまだ魔法の発動には至らない」
うーん。
他に魔法力を持ってる人っているんかな。
もしかして動物とか……?
「そこで学園長は、ひなが呼び出した闇の力に目を付けた」
「ほお……」
「だが闇はさっき言った通り、この世界を元に戻す力。いわば百合世界とは相反する力だ」
「もしや……」
「感づいたか。やっぱミカエルはすげえよ」
「なんだろう……?」
「百合バーストだ。つまり、ゆきの力だな」
えええええっ。
百合バーストにそんな効果あったの……?
てか、じゃあ百合バーストって何。




