44-13
「ね、ねえ!」
「どうかしましたか? ……これは魔法陣ですね」
まさか零した粉が隙間に入ったら魔法陣になるなんて!
んん?
さっきの古い本に書かれた暗号もそうだけど、全部繋がっている?
こ、これってひょっとして、こうなる事を見越してた……?
だとしたらアルすごいよ!
……ん?
じゃあ、あたしが小瓶を落とすって分かってたって事だよね?
あたしそんなドジっ子に見えるかな……。
「離れてください。この魔法陣なら、この魔法で……」
おっと、落ち込んでいる場合じゃない。
ミカエルが何やら魔法陣に手をかざしている。
どうなるのかな。
そう思ってると、魔法陣は青白く光り輝きだし、直後に床の一部が抜けてしまった。
しかも抜けたところには、階段がある。
「なるほど、隠し通路ですね」
やっぱそうだよね!
まさかこんなものがあったなんて。
「行ってみよう!」
「ええ」
そんなわけで、あたしとミカエルは隠し階段を下っていった。
階段はとても急で、あたしは足からゆっくりと降りていく。
それに対してミカエルは、軽々と降りていった。
そして、薄暗い階段を降りていき。
やがて扉に突き当たったので、そこを開けると……。
「うわあ、広い」
「まさかこんな場所があったなんて」
そこは地下に作られた隠し部屋だった。
天井は高く、室内は白緑色の明かりで照らされている。
中央には、学園地下にもあった人がひとり入れそうなガラスの容器があったり、なんだかよく分からないけど魔法の実験で使いそうな道具が周囲に並んでいた。
「ん? この子……」
そんな中、石造りの台の上に、ひとりの女の子が横たわっていた。
あたしはその子をよく見ると……。
「エレナー! エレナが居たよー!」
うわあ!
エレナが居たよ!!
な、なんでここに。
「この方がエレナさんですか」
あたしの声に反応し、ミカエルはエレナへと近づくと、目を閉じたまま動かないエレナの額に手を少し当てた。
「……ですが、目覚めませんね」
「ねえねえ! 起きてよ! あたしだよゆきだよ!」
あたしもエレナの体を揺さぶって、無理矢理にでも起こそうとした。
だけど、エレナからは何も反応が無かった。
「もしかして……」
「うーん……」
まさか死んでいる……?
いやでも、触った感じそんな風ではなさそうだし。
よし!
こうなったら!
「ん……」
あたしは目覚めて欲しいという一心でエレナとキスをした。
このまま眠り続けるなんてないよね?
あたしをひとりにするなんてしないよね?
世界を壊すなんて馬鹿げた事言ってたのは気になるし、目覚めたらまたそうなるかもしれない。
だとしても、このままなんて嫌だ。
…………。
…………。
「ううっ」
「エレナ!!」
「んん? ……ゆきか」
おお!
あたしの願いが届いた!
エレナが起きたよー!
「エレナーー!! 良かったよー!」
「おいおい、重たいぞ……」
う、うん。思わず飛びついちゃったごめん。
「いてて、硬い所に寝てたせいか背中が痛いな」
そうだった、エレナが寝てるところ石の台だった。
多分痛いのはあたしのせいだ……。
「ん? しかもミカエルも居るじゃないか」
「こんにちは」
「よう」
「早速ですが、聞きたい事があります」
「寝起きに急だな」
「あまり時間がありませんので」
「まあ、俺も話したいことがある。多分、お前達の聞きたがっている事だな」
「ならそちらからどうぞ」
しかも目が覚めたばかりなのに、はきはき喋ってる。
闇の中で戦ったような感じでもないし、大丈夫そうかな?




