5-8
メガトン級の火炎は、あたし達を容赦なく押し潰そうと迫ってくる。
あ、あんなのあたしでも防げないよ!!
再起不能どころか……、死んじゃう!!!
もう終わりなの!?
そう思っていた時。
「ふん」
エレナの全身が光り輝くと同時に、彼女は杖を軽く振るう。
すると、あたし達に迫っていた火炎は一瞬で消し飛び、光の粒となって試験会場を照らした。
「なっ!! わたくしの全力が……」
そりゃ、ミカエルも驚くよね。
あたしもびっくりだよ。
あんなの絶対に防げないって思ってたのに、こんな簡単に消しちゃうなんて。
エレナ、どうしちゃったんだろう……?
「なんだかよく分からねえ」
エレナ本人も困惑しているのか、自らの手を見つめながら握ったり開いたりしていた。
「でもな、力が溢れ出るんだ」
確かになんかこう、バトル漫画でありがちな覚醒したら全身からオーラが出ているみたいな状態になってる。
でも急になんで?
何かしたの……?
エレナって、実は隠された力があってそれが目覚めたとか……?
「ミカエル様! 奴の魔法力は……!」
ウィーンが後ずさりをしている。
本当に、どうしちゃったの……。
「!! そんな!」
「80万、130万、190万、240万……、どんどん増えています!」
「馬鹿な! たかが20000程度なのにどうして!」
「言っただろう? 力が溢れるってな」
「300万、310万、3……350万!? まだまだ高まっていきます!!」
な、なんかすごい数値になってる!
ミカエルの10倍以上って事だよね……?
「ちぃっと痛えのいくぞ!!」
エレナはそう叫びながら、杖に魔法力を溜めていく。
杖の先端からは、あたしでも寒気がするくらいの光の暴風が集まっていき、みるみる肥大化する。
「うらあああ!! これでも食らえええええ!!!!!」
そしてエレナは地面とは垂直に飛ぶと、その光の塊をミカエル達が居る場所へと叩き落した。
「いけない!! 防御結界を……!」
光の塊はミカエル達を一瞬のうちに飲みこみ、轟音と暴風と閃光をばらまきながら拡散していく。
…………。
…………。
…………。
…………。
やがて光と音と風が止み、周囲が見えるようになると……。
「う……うぅ……」
「そ、そん……な……」
そこには、ミカエルとウィーンがぼろぼろになって倒れていた。
彼女らが倒れている場所は、まるで隕石でも落ちたかのように大きく陥没しており、持っていた銀の杖とパームカフの残骸が散らばっている。
す、すごい。
あの二人をたった一撃で倒しちゃった……。
「学園長、あれはもしかして……」
「ようやく目覚めたようですね。ゆきの本当の力に」
「気づかれていたのですか?」
「ええ……、ですが予想以上ですよ」
「うに……。勝者、ゆきエレナペア」
「っしゃあああ!!!!!!」
あたし達の勝利が決まった瞬間、エレナは腕を引きながらガッツポーズをした。
なにやら学園長達の様子が気になるけども……。
今はミカエルとウィーンに勝った事を喜ぼう。
本当に良かった……、勝てて良かった……。




