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44-5

ミカエル視点。

 まともに戦って勝てる見込みはない。

 ならば……。


「ミレーユさん、質問よろしいでしょうか?」

「何?」

「あなたは気づきましたか?」

「……だから何?」

「ゆきさんとセフィリアさんを取り巻く環境、ひいてはこの世界について」

 わたくしが感じた違和感について話してみるしかない。

 分かってくれるとは思えないにしろ、せめて作戦を考える時間を稼がねば。


「意味が分からない」

「そう、形容しがたい違和感なのです」

「それが聖百合教の教祖をさらう理由とどう繋がるの?」

「あのまま婚約を迎えてはいけないような、そもそもあの婚約自体が変なのです」

「変なのはあなたよ」

 この様子だと、ミレーユさんも気づいていないようですね……。

 やはりわたくしの思い違いなだけでしょうか?

 その程度で、こんな馬鹿げた事までやるのでしょうか?


「それで、何かいい作戦でも思いついた?」

「……駄目ですね。あなたと戦っても勝てる見込みもありませんし、逃げ切れる自信もありません」

「じゃあ諦めて捕まってくれるのね」

 万事休す。

 ここまでですか……。


「分かりました。ゆきさんと共に都へ戻りま――」

「ミカエル様!!!」

 ん?

 この声は……。


「ウィーンさん!」

 わたくしとミレーユさんの間に突如割り込んできた。


 九死に一生を得た……といいたいところですが。

 わたくしとウィーンさんがふたりがかりで戦っても、ミレーユさんに勝てるかどうか……。


「ここは私が! ミカエル様はお逃げください!」

「そんな! 自ら命を捨てると!! それにお父様は?」

「旦那様は遠方へと逃げられました。あとはあなただけ……!」

「いけません! むざむざ死にに行くなんて!」

「ミカエル様!!」

 …………。

 わたくしに、決断しろと……おっしゃるのですね。


「……私は、あなたが感じているものを理解出来ません。ですが信じております」

「ウィーンさん……」

「あなたの行いが正しい事を」

「……分かりました。お願いします」

「ご武運を」

 ウィーンさん、ありがとうございます。

 あなたと家族で……良かった。


 そう思うとわたくしは、ゆきさんを連れてその場から離れた。

 ミレーユさんは流石にウィーンさんがいたせいか、わたくしを追ってくる様子は無かった。



 都から離れた場所。

 平原のどこかにて。


「はぁっ……、はぁっ……」

 家族を危険にさらし……。

 自らの身を危険にさらし……。


「はぁっ……、はぁっ……」

 家門を捨て……。

 地位を捨て……。


「はぁっ……、はぁっ……」

 過去を捨て……。

 今を捨て……。


 わたくしは、何をやっているのでしょうか。


「…………」

 こんな非合理的な事、どうして。

 自分でも分からない……。


「……ここは?」

 森でミレーユさんから離れた後、都から離れるように走ってきたつもりですが……。


 周囲は草で覆われているのに、そこだけ茶色の大地がむき出しになっている。

 その様子を見て、わたくしは直感した。

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