42-6
闇の中、氷のトンネル内にて。
今あたしたちは、来た道を戻っている。
「ゆき、俺の事信じてくれてありがとうな!」
「う、うん」
「愚か者め……」
別に完全に信じたわけじゃないよ?
一度立て直そうって思ってるだけ。
アルの視線が痛い……。
「信じて下さって感謝します」
「うんうん」
ほら、セフィリアだって戻ろうって言ってるし……。
そんな目で見なくても。
「戻ったら、いっぱい可愛がってやるからな」
「……///」
ちょっ!
や、やだっ!
急に何言ってるの!!
もーエレナったら///
「楽しみだなー」
「…………」
って、舞い上がってる場合じゃない。
「……ごめん」
「あ?」
「どうした」
「ちょっとやる事が出来た。みんな止まって」
「ゆきさん、どうかされたのですか?」
ボロだしてくれて良かったよ。
だって本当に分からなかったもの。
「勇者の剣!」
だからあたしは、魔法力で剣を生成すると……。
「ぐっ! なにを……!」
それをエレナ(中身はアル)ではなく、エレナ?へと突き刺した。
エレナ?は戸惑ったままその場に倒れて動かなくなってしまった。
「ゆきさん! 本物の可能性もあるかもしれないのに、なんてことを!」
セフィリアは慌ててるけど、そうじゃないんだよ。
「このエレナは偽物だよ。あたしが保証する」
「おお! ようやく分かったか!」
「何故……」
「セフィリアなら分かるでしょ。あたしたち、まだ結婚式すらあげてないんだよ? そういうのだってまだしてないし、そもそも奥手のエレナはそんな事言わない」
そう、エレナはそんな事言わないんだ。
……偽物でも言ってくれた時は、ちょっと嬉しかったけども。
「そういう関係だから、していると思ってたけど違ったんだね」
むむ、倒れたはずのエレナが喋りだした。
それどころか、急に立ち上がった!
「やはりひなか」
「久しぶりね。アルキメディス」
「気づいていたか」
そしてドロドロの闇に変化した後、再び人型になって今度はひなの姿に変わったよ!
よ、よかった……、騙されなくて。
セフィリアも見抜けてなかったみたいし、ほんと危うかったよ。
「何故こんな回りくどい事をする?」
「エレナの魂を闇と同化させるまでには、あと1日かかる。その時間が欲しかっただけ」
「ひな!」
「私と同じ苦しみをあなたにも与える。そうすれば私が正しい事を言ってるのが分かるって」
そんな……。
なんてひどいことを……。
「わかんないよ! 他の人の大切な人を奪ったって、あなたに共感なんてしない!」
今ひながやってることは、新たな憎しみと悲しみを生み出すだけなのに!
なんでこんな……。
「ゆき、魔王フラジリーヌと私は愛し合ってた」
「…………」
「彼女とひとつになってると、体も気持ちも充実して、心から幸せだと感じる事が出来た」
「…………」
「あの人を本当に愛していた」
「……うん。だから最愛の人を奪われたのが許せないんだよね」
「許せない? そんな生半可なものじゃない! 全ての人間に償わせてやる!!」
「ごめん。やっぱり理解できない」
ひな、もうあなたを救う事は出来ないんだね。
……なんか悲しくなってきたよ。
「殺しあおう。さあ、奥まで来て」
ひなをとめるには、戦うしかない。
だったらこの世界のため、エレナを救うためにあたしは戦うよ。
ひなは再びドロドロの闇へと変わって地面に潜ってしまった。
あたしはそれを見送ると、先へと進んだ。




