40-10
「えっと、ゆきです。教祖……やってます」
あたしは開口一番なにを話してるんだ。
相変わらずさえないなぁ、はぁ。
「あははは」
「場を和ませてくるとは、さすが教祖様」
「きゃー! ゆきちゃんかわいいー!」
ひ、なんか好意的だった。
展開思ってたのと違う。
なんでもありだね……、あはは……。
それはともかく。
…………。
…………。
ふぅ。
……よし。
「今日は集まっていただきありがとうございました。アニメはあたしだけの力じゃなくって、絵を描いた人、音楽を奏でた人、声をあててくれた人、場所を貸してくれた人、そして見てくれる人。全員が居ないと成立しないと思ってます」
…………。
…………。
会場の人々は、驚くくらいに静かであたしの話を聞いてくれた。
「だからこの場を借りてもう一度、あたしの気持ちを伝えさせてください」
…………。
…………。
そしてみんな、あたしの事を見ている。
「本当に、ありがとうございました」
そんな今だからこそ、しっかりとこの気持ちを伝えよう。
あたしは頭を深々と下げた。
…………。
…………。
…………。
しばらくの静寂の後、リングの脇から手を叩く音が聞こえてくる。
そっちを向くと、エレナとセフィリアがあたしに向かって拍手をしていた。
最初はふたりだけだったけども、やがて一緒にアニメを作った人たちも同じように拍手をし始めていき……。
「みんな……」
そしてその拍手の波は観客席にも広がっていった。
「みんな!」
やばっ、手が震えてきた。
背筋もすっごいぞくぞくするし、あ、あれ?
なんか涙が出てきた。
「おいおい、教祖様が大衆の前で泣くなよ」
「そ、そんなこといったって~!」
うぅ、止まらないや。
エレナの言う通り、教祖だからしっかりしないとなのにね。
おかしいね。
「大成功ですね。ゆきさん」
「うん……。うんっ!」
セフィリアの言う通りだよ。
みんなで作ったアニメはみんなの気持ちを掴んだ。
よかった、本当によかった!
「みんな、本当にありがとうございました!」
「おいおい、さっきも言っただろー!」
「だって、だって嬉しいんだもん……」
「うふふ、良かったですね」
その後も、あたしは何度も感謝の気持ちを伝え続けた。
「ゆき様万歳!」
「聖百合教永遠なれ!」
「ゆきちゃんかわいいー!」
「素敵な作品ありがとうー!」
観客の人たちも、そんなあたしの気持ちにこたえてくれた。
もう、最高だよ……。
ほんとうに……、ほんとうに……。




