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日が没していき、周囲が暗くなっていく……。
「それでは皆様、リング中央をご注目ください」
そして完全に暗くなり、夜となった時。
”今から昔、歴史の彼方に忘れされた時”
”この地域を統べる小国の姫は今年で16となり、習わしに従い大国の王子の下へ嫁ぐ”
”それがこの小国を守る唯一の方法であり、姫もまた例外ではない”
リングの中央に設置された魔法陣と水晶から光が発せられると、あたしたちが作った3Dアニメが映し出された。
”しかし、習わしに従う姫には別の感情と真意があった”
おお!
ちゃんと導入部入ってる!
いい感じいい感じ!!
”ねえお願い、離れないで!”
”私のような従者が姫様といけませんし、姫様には既に婚約者が決まっております”
”でも私はあなたが……、あなたが!”
”……それ以上はいけません。どうか口になさらないで下さい”
”でも!”
”口になさってしまえば、私はすぐにでもここを去らなければなりません……”
「おお! なんだあれは……」
「喋っているぞ? 生きているのか?」
「幻影だがまるで本物のようだ」
ふふふ、観客の人らも好印象だ。
みんな目を丸くして見ているね。
あたしは見慣れてるけど、アニメを初めて見る人ってこんなリアクションするんだねえ。
”だったらせめて、今夜だけはずっとそばに居て”
”かしこまりました”
”ねえ、私の事好き?”
”もちろんです姫様。姫様の事を敬愛しております”
”そうじゃないの……”
”……愛しております。私もずっと昔からあなたの事を”
「この作品って!」
「教祖様の最初の作品ですね」
「だよね! きゃー!」
「でも、ちょっとシチュエーションが違うかも?」
「アレンジかけたのかな? さすが教祖様だ」
そう、何を隠そうとも、今回アニメ化した作品はあたしがこの世界で最初に出した作品だ。
内容は、お姫様とメイドさんの百合モノ!
立場上は他の男の人に嫁がないといけないんだけど、実はメイドさんが好きだったっていう話。
アニメ化にあたって、少しアレンジはかけたけども。
特に際立った内容でもないし、あたしからしてみたらありきたりかなと思う。
それでもやっぱし思い入れ強いからね。
うーん。
みんな声優なんて初めてなのに、よく出来てるなぁ。
全然違和感がない、実はみんな演技の才能あったり……?
いやぁ、良い出来だ。うんうん。




