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あたしとエレナ、ミカエルとウィーンはそれぞれ戦うため中央へと向かっていく。
「ミカエル様、どうされますか? 戦いますか?」
「何もしなくて点数に響くのは嫌ですが、……この二人ならわたくしが出る必要はなさそうですね」
「おっしゃる通りです。すぐに終わらせます」
まあ!
何このお嬢様!
出る必要がないとか余裕ぶっこいちゃって!
やっぱむかつく……嫌なひとだ!
「よーう! 入学ん時はよくもやってくれたな」
「ふん、何のことだ?」
「なんだ? 忘れたのか?」
「いちいち覚えておらん」
エレナの杖を持つ手が震えている。
あの時の事を少しも忘れていなかったんだろうな。
でもそんなエレナの怒りとは逆に、ウィーンは涼しい顔のままだ。
それもまた腹立つ。
今ならエレナの気持ちも分かるよ!
「模擬戦開始してください」
あたし達は倒すべき宿敵。
向こうは、通過して当然の相手。
お互いに相反する気持ちを胸に抱いたまま、戦いの始まりを告げる合図がフロリアンナ先生から発せられると……。
「なら思い出させてやるよ!!!」
エレナは猛然と走りだし、光り輝く杖をウィーンの方へと向ける。
「おらおらおら!!!」
杖からは無数の光弾がウィーンめがけて飛んでいき、ウィーンは瞬く間に飲みこまれてしまう……はずだった。
「ミカエル様。彼女の魔法力は今どの程度でしょうか?」
「20000を少し超える程度ですね」
「雑魚ではなさそうですね。……我々の敵ではありませんが」
ウィーンはミカエルと会話しながらも、エレナの繰り出す光弾を全て、金属製のパームカフがついた手で振り払っていく。
「てめえ! 話しながら相手してんじゃねえ!!」
そっか!
エレナの無数の光弾攻撃はあくまで目くらましで、本命は杖に魔法力を溜めてそれをぶつける攻撃なんだ!
この間合いならきっと当たるよ!
そう思った矢先……。
「ふん!」
ウィーンはエレナの杖を左手を使って巧みに受け流すと、パームカフのついている方の手をぐっと握り、エレナの腹部に正拳突きをした。
ウィーンの拳はエレナの腹部へとめりこむと、エレナは後方へ大きく吹き飛ばされてしまう。
あああ!
まともに受けちゃったよ……。
ど、どうしよう、どうしよう!
「ぐっ……!」
だけどエレナはどうにか着地に成功し、かつ立ち続ける事が出来た。
「思い出したぞ、舞踏会の時の奴か」
「はぁ、はぁ……」
「少しは成長したみたいだな」
「……お陰様でな」
「どうやって防いだ?」
「体に当たる直前、杖に溜めていた魔法力を体に移動させて盾代わりにしたのさ」
「なるほど器用だ。だが、体力は消耗している」
「う、うるせえ! 俺はまだいけるぞ!」
強気な事は言ってるけれども、エレナの膝はがくがくと震えている。
どうみても立っているのが精いっぱいだ。
どうしよう、このままじゃ舞踏会の時の二の舞だよ!
何かあたしに出来る事……、出来る事は……。
「魔法力8000まで落ちました。ウィーンさん、とどめを」
「かしこまりました」
ウィーンはミカエルの方を向いて一つ頭をさげると、ゆっくりとこちらへ迫っていく。
まずいよ!
このままじゃあ!!




