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「なあゆき」
「うん」
「お前、何の為に絵を描いているんだ?」
えっ。
そんなの決まってるじゃん。
あたしは教祖なんだよ?
しかも魔法少女ランキング1位だし、芸術家として貴族にだって認められている。
だから、みんなを喜ばさないといけない。
エレナだって、巫女だし夫なんだから分かってると思ったのに。
「……あー、やめとこ。邪魔して悪かったな」
「えっ、ちょ、ちょっとー!」
な、なに急にどうしちゃったの!
なんかまだ言いそうな感じだったよ?
どうしてやめちゃうの?
「頑張れよー! お前ならきっとたどり着けるはずだからな!」
「待って! まってってばー! 行っちゃった……」
ええええええ!
結局何だったの……。
何が言いたかったの……。
「もー! なんなのー!」
エレナといいセフィリアといい意味深な言葉だけ残していくし!
あたしどうすればいいの!!
「はぁ……」
万人受けする内容。
セフィリアの少し昔を思い出せって話。
エレナの何の為に描いているかって話。
うーん。
どれも繋がりそうにないし……。
少し昔……かぁ。
昔の作品を見ろって事なのかな?
そう思い、あたしは棚にあったこの世界で出した作品を手に取り、ページをめくっていった。
これ、ブランディちゃんが気に入ってたね。
うふふ……、あんな可愛い子が百合に興味持ってくれるなんてね!
次の作品は、あーこれは邪教の経典とかいって燃やされそうになった作品だ。
ま、まあ百合だから仕方ないのかな……、今考えると。
でも、教徒の人たちは内容について真剣に話してたんだよなぁ。
「お、これって」
次に手に取った作品。
これ、初めて学園長に認められたあたしのデビュー作だ。
うーん……。
今見返すと、コマ割りとかもうちょっと直した方がいいかも。
ちょっとパースも狂ってるとこあるし、誤字は商人ギルドの人が見てくれて大丈夫だけども……。
なんだろう、今より絵あまりうまくない。
でも……。
この作品……。
ぺらぺら……。
ぺらぺら……。
なんだろう、真剣に読んじゃう。
不思議な魅力というか、引き込まれるよね。
我ながらいい作品描いたなぁ。
なんかこう、百合が好きってのがすごい伝わってくる感じ。
…………。
…………。
ああ!
そっか!
この感覚だよ!!
教祖とか、魔法少女活動とか、プロの作家とかそういうのじゃない。
あたしはあたしの描きたいものを描けばいいんだ!
万人受けとか立場とか失敗した時の事考えてて忘れてたよ……。
だったらあたしは百合を描くぞ!
だって、それがあたしの描きたいものだもん!
そもそも、聖百合教なのに好きな百合描かないとかありえないでしょー!
きっとエレナやセフィリアが言っていた事って、そういう事なんだよね?
うん、きっとそうだ。
じゃあジャンルは百合で決まりとして。
内容は……。
…………。
…………。
あたしひらめいた。
いい題材、あるじゃん……。
ふふふふふ、これだ……。
これしかない……。




