39-8
長く厳しい魔法少女チャンピオンシップは終わった。
出場者全員がリングの上に集合し、表彰式が開始された。
だけども、あたしはエレナが居ない事に意識が集中してしまい……。
「それでは優勝したエステレラさんには、魔法少女ランキング1位と、副賞として100万マグパポイントを付与します!」
「へ? あぁ、ありがとうございます」
おっと、あたしの番だった。
すっかり上の空だったよ……。
「お気持ちをひとこと!」
「う、うーん。すごく嬉しいです。みなさんの応援のおかげです」
なんかエレナの事が気になって、すごい片言というかぎこちない……。
なんかもうちょっと上手い事言えばよかったかも。
「うおー!」
「教祖様! 教祖様!!」
「きゃー! ゆきちゃんすごいー!!」
で、でも、観客の人らは盛り上がってるしいいのかな……?
魔法少女ランキング1位になったから、きっと他の魔法少女もあたしの話を聞いてくれるようになったはず。
うん、良かった事にしよう、そうしよう。
こうして大会は終わり、あたしはセフィリアとふたりで帰路についた。
途中、教徒の人に見つかってパニックにならないように気をつけつつ、なんとか聖百合教の本部へ無事戻る事が出来た。
聖百合教本部にて。
「ゆきさん、おめでとうございます」
「ありがとうございます! あの、エレナは?」
「エレナさんですか? こちらには来られていませんが……」
あれ、ここにもいない……?
じゃあ出かけているって事なの?
「てっきり、ご一緒かと思っておりました」
「う、うん」
セフィリアから聞いた話だと、決勝以外はちゃんと見ててくれていて、何故か決勝だけいなかった。
なんでだろう……。
「どうかされましたか?」
「いや、大丈夫だよ! あはは!」
う、うーん。
何か大事な用事でもあったのかな?
本当に、どうしたんだろ。
「大会で疲れちゃったから、ちょっと部屋で休みますっ」
「ゆっくりと休んでくださいね」
エレナの事が心配なのと、決勝戦頑張ったのに見てくれてなかった残念な気持ちが顔に出る前に、あたしは商人ギルドの人から離れてまっすぐ私室へと向かった。
聖百合教本部内、教祖の私室にて。
「…………」
エレナ、どこへ行っちゃったんだろう。
はぁ……。
「失礼します」
おや、その声。
「具合はどうですか? ゆきさん」
「ん? うん、あたしは大丈夫」
セフィリアが心配してきてくれたんだね。
あはは……、なんか教祖なのに周りに心配かけっぱなしで申し訳ないね……。
「…………」
「エレナさんの事が心配なのですか?」
「うん」
そりゃあ、あたしの旦那様だからね。
心配だよ。
「…………」
ん?
セフィリアの表情がどこか暗いような?
あたしが疲れているからかな、気のせいかな。
「どうしたの? セフィリア」
「いえ、何でもございません。今日はゆっくり休んでくださいね。では失礼します」
「うん、来てくれてありがとうね」
なんだろう、どこか影があるというか、いつもと違う感じがした。
うー。
エレナもいないし、セフィリアもなんかおかしいし、どういう事なの!




