39-5
時間を止める相手に勝つ方法……。
もー!
そんなんないから!!
時を止め返すとか、超高速で動くとかそんなん出来るわけないでしょー!
「…………」
うぐぐ、万事休すかな。
あたしもいよいよここまで……。
「むっ」
と思ったら、ミレーユが両手を広げて……。
なにこれ煙?
リングが白い煙で包まれていく?
いったい何を……。
しかもこの煙、何かキラキラしている。
なんだろ、何かあるのかな?
でも今更こんな事しなくたって、時間を止めて攻撃したらあたし倒せるよ?
よくわからない……。
「この煙は魔法力を遮断するの。これで邪魔されなくなった」
「…………」
「魔法力を遮断するという事は、あなたの具現化能力も、私も時間を止める能力も使えない」
「えっ」
あたしの力を封じるのは分かるけど、自分の能力も使えなくした……?
何考えてるの。
「な、なにをする気なの?」
「あなたに興味が出てきたから、勝負をつけるのは話してからいいかなと思った」
じゃあ別に今ここでしなくてもいいような。
で、でも、ミレーユは本気みたいだし……。
あたしも戦うより、お話した方がいいし……。
「ねえ、どうしてこの大会に出たの?」
うーん。
まさかひなの事言うわけにもいかないし……。
誤魔化す局面でもなさそうだよね。
「……救いたい人が居るからだよ」
「救う? 大会と関係があるの? まさか病床の信者に優勝するから頑張れとでも言ったの?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ何? 漠然としすぎて分からない」
駄目だ、どうしたら納得してくれるんだろ。
迂闊にひなの事言って、学園長にでも聞かれたら。
ううん、絶対学園長ならあたしの動向を気にしているから、ばれちゃうよ。
「鈍いわね。この煙の中ではいかなる魔法も使えないのよ」
そ、そんな事!
何度も言われなくても分かってるよ!
ん?
魔法を使えない?
という事は、学園長には何やってるか分からないって事……?
「非効率なのは嫌いだから、さっさと言って。言わないならとどめ刺すよ」
「う、うーん」
この状況、言うしかないかな……。
でも、ここでミレーユを仲間に出来たら大幅戦力アップだし。
…………。
ええい!
迷うなあたし!!
「闇の核、勇者の成れの果てを救いたい」
はー、胸がどきどきする。
さあどんな反応するかな!
「……救えるの?」
「分からない。でも勝算は無くはない」
ひなを救う方法。
あたしにはひとつだけ心当たりがあった。
「確実ではないのね」
「うん」
でもそれは、あくまであたしの推測でしかないから、思い通りにいくなんて無い。
むしろ根拠がない分、失敗する可能性の方が高い。
でも、このままじゃ。
ひな、放っておけないもの。




