39-4
あたしは勇者の剣を生成し、それを大きく振りかぶり……。
「…………」
ミレーユが近づいてきた!
今ここで振り下ろせば……!!
「えっ?」
うそ。
さっきまで居た場所から、いきなり懐に……。
「…………」
「うぐっ……」
な、なんで。
またあたしがやられちゃった……。
さっきまで少し離れてたのに、いきなり移動してきたよ?
どうして……。
あたしの視界が大きくぐらつく。
そして気がつくと……、あたしは再び地面を這っていた。
「…………」
「…………」
観客からの声も無かった。
あたしが体力の限界にきたのか、それともやられすぎて絶句しているのか。
たぶん、後者かもしれない。
「…………」
分からない。
勇者の吹雪で、全方位どこから来ても分かるようになっていた。
事実、途中までは見えていた。
だけど、突然懐に入られて……。
もしかして、ルリ以上の格闘術の使い手?
ううん、そうじゃない。
何かもっと別の、姿を消す以外の魔法を使っている。
「うぅ……」
た、たたなきゃ……。
ここで負けちゃったら、今まで築きあげてきたものが……。
「はぁはぁ……」
「これ以上やれば、あなたはタダじゃすまない。もう降参しなよ」
「ば、ばかにしないでよっ! まだ……いける……!」
どうにか立てた。
まだ魔法力は残っている。
でも、このままじゃまたやられてしまう。
鎖剣も駄目、結界も駄目、吹雪も駄目。
ううん、諦めちゃだめだ。
考えるんだ、ミレーユの魔法のことを。
「はぁっ……、はぁっ……」
「…………」
吹雪の中を、あたしにばれずに進む方法……。
「はぁっ……、はぁっ……」
「…………」
そんなの、空間を一瞬で移動するような。
たとえば、ワープでもしないと無理なような。
ううん、ワープ程度ならルリは見切るはず。
だからワープって事はないはず。
…………。
…………。
しかも、あの時って確か、ルリの格闘術も防いでいた。
それって、超パワーとか、超スピードも簡単に見切れる能力。
そんなのルリ以上の格闘術の使い手以外……。
…………。
…………。
あっ、ひとつだけあった。
ルリの攻撃を防いだり、あたしの懐に気づかれずに入る方法。
「……もしかして、時を止められる?」
むむ、ミレーユの表情が少し変わった。
ほ、本当なの?
「私の能力が分かった人、魔法少女だとあなたが初めてだよ」
う、うそ……。
当たっちゃった……。
って、時間を止める魔法!
そんなん、あたしじゃどうあがいても勝てない……。




