38-4
エレナ視点
円形闘技場から、聖百合教本部へ帰る道にて。
「…………」
クソッ、何なんだよ……。
「…………」
そりゃあ、俺は魔法力だってようやく200万。
ゆきのような大会での実績も無いし、ミカエルやセフィリアのような良家の生まれでもない。
「…………」
でもな。
うーむ……。
俺は足を止め、視線を落とした。
「…………」
今あるのは、ゆきの旦那であり一番最初の巫女ってだけだ。
だが結局それだって、ほぼ偶然というか成り行きというか、本当に望んで勝ち取ったものじゃない。
「…………」
だから、俺はゆきに相応しくない。
そんなのは分かってたんだよ。
ずっと前から、それこそセフィリアにああやって公言される前からな。
「…………」
それでも、なんなんだこの気持ちは……。
この割り切れない胸のもやもやは……。
本当にこのままでいいのか?
このままこの気持ちを抱え続けるのか?
だが解消するには、自他共にゆきに相応しい存在にならないといけない。
「クソッ!!」
んな事が出来れば苦労はねえんだよ!!
俺はそう思うと、近くに落ちていた石をおもいっきり蹴り飛ばした。
石は大きく飛んでいくと、近くにあった生活水路へ落ちていった。
「魔法力だけでも2.5倍差か……」
ゆきはどんどん成長していっている。
絵でも成功し、教祖としての自覚も少しずつだが出てきている。
魔法力だって、きっかけはどうあれ今じゃミレーユと肩を並べるくらいに成長した。
それに比べて俺はどうした?
MA学園を卒業してから何も変わってないじゃないか。
「……ははっ」
これじゃあ、セフィリアにきつく言われるのも無理はないな……。
カッとなったのは、きっと図星だったからだろう。
「…………」
でもな、そう簡単に魔法力を増やすとか実績をあげるとか出来ねえよ。
学園長に頼む?
何されるか分からないのにか?
ゆきのように芸術の道に進む?
俺は絵なんて描けないぞ?
「……どうしたもんかな」
俺は空を見上げた。
気持ちいいくらいの星空が広がっていたが、俺の気持ちは決して晴れる事は無かった。




