38-2
ミレーユとルリの戦いは、ルリが一方的かと思われていた。
「なあゆき」
「うん?」
「ルリって、格闘術の達人でしかも魔法力すげえ高いんだろ?」
「そうねえ」
「じゃあ、なんで一発も有効打がないんだ?」
そう言われれば……。
ルリはずっと攻めているにも関わらず、まるで優勢になっている様子がない。
ミレーユの顔も平然としてるし。
「うーん、ミレーユも実は格闘術の達人だった?」
「まぁ、そう言われても納得だよな」
しかし、あたしが全然見えないのによく受け止められるよね。
まるで予想しているみたいだ。
あー!!
そっか、そういうことだ!!
「エレナ、ミレーユは相手の攻撃を予想出来る魔法を使ってるんだよ!」
そうだよ!
姿を消せる魔法だけじゃなくて、相手の攻撃も分かる。
未来予知能力の持ち主なんだ!
「うーむ、仮に予知出来たとして、あんな速い攻撃避けられるか?」
「う、うーん」
「俺なら予知出来ても食らうな」
「あたしも……」
うーん。
確かに予知出来たところで、ルリの攻撃に追いつけるかどうかなんて分からないし……。
やっぱ格闘術の達人だった説が濃厚なのかな。
「むっ」
おや、ミレーユが間合いを離した途端消えた!
ついに攻めて来る……?
「…………」
それに対してルリは、腰を落として構えた。
どこから来ても大丈夫なようにしてるんだね、多分。
でも、あれだけの達人だったら姿を消してもばれそうだよね?
気配とか、殺気とかなんかそういうので。
!!!
ルリの体が大きくよろめいた……?
な、なんで。
まただ。
またルリだけ一方的に攻撃受けてる。
それに対して、困惑している……?
ね、ねえ。
いったい何が起こったの?
「仕方ありませんね」
ルリは少し口角をあげると、そのまま真っすぐ飛んでいき……。
ひっ、全身が燃えて火の鳥みたいになったと思ったら、そのまま一気にリングに落下したよ!
リング全体が爆風に飲みこまれて……ひゃあ!
す、すごい風圧……!!
「こ、これがあいつの奥の手か!」
「ひええ、すごい力……」
観客席にまで広がるこの衝撃、風、熱……!
こんなの、リンク内に居たら直撃じゃなくてもただじゃすまないよ!
「勝負ありましたね……」
「だな、流石のミレーユも終わりだな」
そうだよねえ、あんなの受けて無事なわけないし。
って次戦うのあたしじゃん!
ひー、あんなの無理無理!
はぁ、でも頑張らないと……。
そう思っていた時。
爆風がおさまり、光と煙で覆われていたリングの上が次第に明らかになっていくと……。
「あぐっ……」
「…………」
そこには、ルリの首を掴んだまま無表情でいるミレーユの姿があった。
う、うそ。
あれが……効いてない……?
それどころか、致命傷を負っているのはルリの方だなんて!
「勝負あり! レティシア戦闘不能とみなし、勝者ミレーユ!!」
な、なんで。
一体何がどうなってるの。
わからないよ!!




