37-8
円形闘技場、選手控えの部屋にて。
「ゆきすげえな!! あのリゼットに勝つなんて!!」
「本当です。素晴らしいですね、うふふ」
「ありがとう。あたしも驚いてる……」
いやほんとその通りだよ。
あたしの予想、当たってて良かった……。
なんか毎回言ってるけど、今回は今まで以上にぎりぎりだったね。
「でも、はぁー、つ、つかれた……」
そして今までで一番疲れたよ……。
も、もう歩くのもやっとで。
思い返せば、魔法力が尽きた状態って体験してなかったからなぁ。
こんなにしんどいなんて、ふー。
「明日はいよいよミレーユと戦うからなー、今のうちに休めるだけ休むしかないな」
「レティシアさんという可能性もありますからね」
そ、そうだった。
明日はミレーユか、レティシア……もといルリが相手だったんだ。
……これ回復するのかな。
不調のままじゃ絶対に勝てないよ?
「大したものね」
「お前!」
「リゼットさん!」
んん?
何でリゼットがここに?
「なんでここに来たんだ? 負け惜しみか?」
「そんなんじゃないわよ」
おや、リゼットがこちらに歩いてきて……。
どうしたんだろ。
「どう? 具合は?」
「も、もう歩けないくらいへろへろだよ~」
「ちょっと見せなさい」
うわあっ!
いきなり顔に両手当てられて、しかもリゼットの顔が近い!
ひ、ひいー、いきなり何なの!
で、でも可愛い……。
「あなた、マジックリカバリー能力持ち?」
「はい」
「なら治療してあげて、極度の魔法力不足に陥っているわ」
「分かるのですか?」
「魔法力の流れが分かるから、回復は無理でも状態は分かるわよ」
あっ、そういう事。
あたしの様子を見ただけなのね。
……何を期待してるのあたし。
「魔法力が戻って、一晩眠れば元に戻るから安心して」
ほっ、どうやらそんな重症ってわけではなさそう。
よかった……。
「あともうひとつ」
「うん?」
「ミレーユもレティシアも強いわよ」
「う、うん」
「じゃあ、頑張って」
用件が済んだらさっさと行ってしまった……。
もしかして、あたしの事心配してくれてたのかな。
心を掴んだ……とは思えないけども、少なくとも負の感情を抱かせたわけではなさそう。
ま、まあそれならいいのかな。
「じゃあ治療しますね。じっとしていて下さい」
「うん」
「ちょっと出てくわ。すぐ戻ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
あたしがセフィリアの治療を受けるべく、膝枕の上に頭をあずけた時だった。
おや、エレナが部屋から出てっちゃった。
どうしたんだろ。
はぁ~、それにしてもセフィリアの治療あったかいなぁ。
なんかこう、温泉入ってる感じ。
そういえばこの世界って温泉あるんかな?
あるなら、みんなと行きたいな。
「ゆきさん」
「うん?」
「ちょっとごめんなさいね、すぐ戻ってきます」
「うんー」
あらら、セフィリアも言っちゃった。
ふたりともどうしたんだろ。
…………。
…………。
…………。
…………。
うーん、誰も居ない。
静かだ。
…………。
…………。
…………。
…………。
次の相手はミレーユか、ルリか。
どうしよう?
…………。
…………。
…………。
…………。
消える相手だから、やっぱ鎖剣なのかなー?
でもランク1だし、通じるかどうかわからないよねぇ。
ルリの方だと……、どうやって戦おう?
…………。
…………。
…………。
…………。
Zzz。
Zzz。
…………。
…………。
…………。
…………。
ん?
物音が、誰だろ。
「お、セフィリアおかえり」
「……ええ」
「よう、待たせたな」
「エレナおかえり」
最初にセフィリアが、少し間をおいてエレナが帰ってきたや。
「エレナさん」
「ん? なんだ?」
「どこへ行ってたのですか?」
「……ションベンだよ。そんな事言わないといけないのか?」
「いいえ、……変な事を聞いてしまって申し訳ありません」
むむ、なんかセフィリアの様子がおかしい。
何かあったのかな……?




