36-5
「お、おい……」
「教祖様が負けた……?」
「ゆ、ゆきちゃん……」
…………。
…………。
「やはりヘイルシスターズが勝ち残ったか」
「そうね」
…………。
…………。
…………。
「こ、これは、勝負あったか……!」
…………。
…………。
…………。
…………。
「エステレラ、戦闘不能とみなし……。勝者、フロリアン――!!」
「ちょっと待ったああ!!!」
ってこらこら!
あたしはまだやられてないよ!!
じゃあなんで無事だったかというと……。
ティエラの放った氷の塊から逃げる事が出来なかった。
もちろん、あんな巨大な物を一瞬で砕くなんてのも無理だ。
そこであたしは、ちょっと前にセフィリアに言われた事を思い出したんだ。
ドーム状の盾を作って攻撃を耐えれば、魔法力切れを狙えるってね。
元々魔法防御力は高いから、そのままぺちゃんこにはならないとは思ってた。
だけどもそれじゃあ駄目。
ティエラには通じないと思う。
防いでいるあたしの方が先に魔法力無くなっちゃうから。
だからあたしは、ドーム状の盾を作って攻撃を耐えて……。
そして……。
「やああああ!! 勇者の螺旋槍!!!」
かつてミカエルの氷の槍攻撃を破った時と同じ要領で、魔法力の一点集中で氷の塊を突破する!!
しかも今回のはただの槍じゃないよ!
というか、槍だったら突破出来ないと思ったので……。
「な、なんだあの武器は!」
「回転しているのか……?」
「きゃー! ゆきちゃん無事で良かったー!」
その槍を回転させて、しかもらせん状に切り込みもいれた!
まるでドリルのように!
これなら固い物だって掘削して進める!
やっぱ勇者と言ったらドリルだよね。うん。
よっしゃあ!!
あたしの思惑通り氷の塊は難なく貫けたぞ!
「いけええええ!!!!」
このままティエラ本体に直接攻撃だー!
あたれええええーーー!!!!
「あびゃあっ」
あたしのドリルがティエラに直撃!
このままあたしは無事に着地して、ティエラは頭から落ちてった。
「ど、どうだ!」
「…………」
リングアウトはしてない。
というか、氷の塊のせいでリングが壊れちゃってる……。
ひええ、今思えばよくあんなの耐えられたなぁ……。
「…………」
「…………」
おねがい!
起きないで……!
「勝者! エステレラ!!」
「うおー!」
や、やった……。
どうにか勝った!
ふう、あぶない……。
「いてて、やられちゃったねぇ」
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよぉ」
ドリル、思いっきり受けたからね。
うーん、体どころか衣装にすら傷が無い。
改めて感じたよ、この魔法少女衣装すごい。
立って起き上がれたし、大丈夫かな?
「槍を回転させて貫通力をあげる、あんな攻撃初めてみたよぉ」
「う、うん」
この世界じゃ、ドリルなんて無いのは知ってた。
前の学園潜入の時に工具漁った時、つるはしとシャベルしか無かったからね。
「まいったねぇ。次も頑張ってねぇ」
「はいっ」
勝負に納得してくれてるし、これでよかったのかな……?
でも戦うのに必死だし、これで魔法少女の心を掴めればいいけども。
そう思ってると、ティエラはあたしから離れていき、闘技場から去って行く。
「でもねぇ、ひとつだけ言わせて欲しいなぁ」
「なんでしょ?」
「私は病んでないよぉ、じゃあねぇ」
そして去り際にそう言い残すと、手を振りながら退場していった。
いやいや!
絶対に病んでる系でしょ!
ひー、自覚症状ないとか……。
しかも笑ってるし、やっぱ怖い。




