36-3
「じゃあいくよぉ」
氷魔法少女って言うくらいだから、きっと空間を凍結させたり、氷柱大量に飛ばしたりしてくるのかな。
もしも飛び道具だったら、勇者の盾で防ぐ?
それともミカエルの時みたいに槍で貫く?
さあ、どうする……!
おや?
片手で持っていた衣装と同じ色の宝石が埋め込まれた杖が氷で包まれて……。
まるで剣のようになった。
「ササナキャ」
「ひっ」
って、そのまますごい勢いでこっち来たよ!
まさかの肉弾戦!
しかも今までの雰囲気と違う!
瞳にハイライト無くなってるし、なんかこう病んでる感じ!
ひえぇこわいよう……。
ううん、怖がってる場合じゃない。
「勇者の剣! やああっ!!」
あたしも武器を出して迎え撃たないと!
よし!
な、なんとか受け止めた。
「く、くう……」
け、けど…‥。
すごい力、お、押されるうぅ……。
「ネエドウシテササレテクレナイノ?」
「ひぃっ」
間近で見るとこわいよこの人!
光無い目、めっちゃ見開いてこっち向いてるし!
なんか黒目の部分めっちゃぷるぷるしてるし!
ひー、なんなのもー!
「離れてー!」
あたしは思いっきり力を加えて、どうにか相手を押し飛ばして距離を開ける事が出来た。
こ、これで体制を整えて……。
って!
うわあまた来たよー!
「アハハハハ」
「ひぃぃっ!」
さっきよりも、剣を振るう速度があがって……!
う、う、防ぐので……、手いっぱい……!
こ、これ以上はもう!
「…………」
あ、あれ?
攻撃が止んだ?
フロリアンナの動きが急にぴたっと止まったよ?
「中々やるねぇ」
しかも、さっきの病んでる状態から普段の状態に戻った。
い、いったいなんなの……。
「ゆきちゃんは剣術習ってたのぉ?」
「……独学です」
まさか、アクションゲームの動きを見よう見まねでやってたら、なんとかなりましたなんて、言えないし言っても分からないからね……。
「すごいねぇ」
正直、あたし自身も驚きだよ。
現世じゃ思ってても体は絶対についてこないもん。
それが今は、あれだけの猛攻を一切受けずにしのぎきったわけだ。
勇者の力にそんな能力はないはずだし、これが異世界補正かな……。
「ミィナと同じ呼び名じゃ言いにくいから、ティエラでいいよぉ」
うう、剣術の事聞いたと思ったら、今度は急に自己紹介初めてくるし。
わ、わからんこの人……。
でもなるほど、先生の方はミィナで、今戦ってる病み系魔法少女はティエラってわけね。
「今度は魔法でいくよぉ」
という事は、次は遠距離で攻撃してくるわけだね。
さっきの病んでるアタックも怖かった、次もきっと……。
ごくり……。




