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4-8

「それじゃあ、あたしはどうすればいいんでしょう?」

「分かりません。私は画家ではありませんからね」

 ええ、そんなー。

 なんか散々言われたのに、分からないって……。


「その答えを明日までに出すのが今回の宿題です」

 なんだろう、”この先は自分の目で確かめろ!”って明確な回答を言わず、投げっぱなしな攻略本みたいな感じだよ。


 うーん。

 生きた絵を描く方法かぁ……。


 …………。

 …………。

 …………。

 …………。


 だああああ駄目だあああああ!!

 そんなの分からないよおおお!!!


 あたしは苦悩しながらも絵を描き続けた。

 それでも、学園長を満足させる事が出来なかった……。



 試験前日。

 教室にて。


「ゆき、眠そうだな。大丈夫か?」

「う、うん……」

 結局、学園長を納得させられなかった。

 答えが気になってずっと寝れなかったし……。


「ねえエレナ、明日試験だけどもどうかな?」

「おう! しかもとっておきも用意したぞ!」

 とっておきって何だろう?

 エレナの事だから、すんごい魔法とかかもしれない。


「これであのふざけた奴らをボコボコにしてやる……」

 ウィーンに大切な杖を折られ、しかも一切謝る事もなしだしなぁ。

 あれ、壊れた杖どうしたんだろ。


「杖はどうしたの? 修理したの?」

「いや、ここの工房へ持っていったが駄目だった。だから新しいのを貰った」

 なるほど、魔法道具も支給してくれるのかー。

 あたしもせめて、強い武器くらいは見繕ってもらうべきなのかなぁ。


「で、ゆきはなんでそんなにボロボロなんだ?」

「うーん。実はね――」

 あたしは、学園長の個別授業の事は隠しつつ、イメージトレーニングのために絵の練習をしている事だけを伝えた。


「ゆき、絵描くのか」

「うん」

「ちょっと見せてみろよー」

「う、うん。はい」

 思えば、なんか人に見せていい結果だった試しがないや……。

 今回もダメだしかなぁ。


「上手いじゃねえか」

「ありがとう……」

 意外と高評価だった。

 ちょっと嬉しいな!


「でもこれじゃあ駄目なんだ。もっと人を感動させないと……」

 学園長も技法に問題はないって言ってくれてた。

 人を感動させるのが大事って言ってた。

 でも、それが分からない……。

 もう明日だし、間に合いそうにないよ……。


「なんだ、そんな事か」

 悩んでいるあたしとは逆に、エレナは拍子抜けした表情をしながらそう告げた。

「そんな事って、エレナは分かるの?」

「んなもん簡単だよ。ここだよ、ここで描くんだよ」

 そしてエレナはそう言いながら、握りこぶしであたしの胸をトントンと叩いた。


「むね……?」

「そうだ。ゆきは絵を描くだろ? 何のために描く?」

「え? うーん。なんだろう」

 あたしの絵を描く理由。

 有名になって、チヤホヤされて、あわよくばお金いっぱい稼いで……。


「分からずに描いてるのか?」

「そ、そんな事ないよ! ゆ、有名になりたくて……」

「いやそうじゃなくて。あーそうだなー。なんで絵を始めたんだ?」

 あたしが絵を始めたきっかけ。

 それはほんの些細な理由だ。


 小さい時に見たアニメで、女の子同士がちょっと恥ずかしがりながらも、力を合わせていろんな困難を超えていく。

 それがかっこよくって、あたしもそういうのが描きたくって。

 元々絵描くのは好きだったし……。


「あたし……、絵描くの好き。女の子カップル好き」

 そっか……。

 元々は、あたしは絵を描くのが好きだったんだよね。

 女の子同士が恥ずかしがりながらも手を繋いだり、優しくしたりされたりするのが好きだったんだよね。


 でも好きの延長で始めた同人活動で、全然売れないし作品も広まらなくて。

 そのうち好きな絵を描いて楽しいよりも、売れる事が楽しいと思うようになってた。

 だからちっぽけの売り上げや評判に一喜一憂したり、同人本売るためにコスプレとかSNSとかで絵を描く以外の活動もするようになったり……。


 あたし、いつの間に変わっちゃったんだろうね。

 なんか一番大切な事、思い出した気がするよ。


「ならそう思いながら描けばいいんじゃないか?」

「うん。もうちょっと頑張ってみる」

「おう! お互い試験頑張ろうな!」

 それに、好きなもの描いて駄目だったら諦めもつくよね。

 よーし!

 絵を描いたら、もう一度学園長へ見せに行くぞー!

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