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4-7

 試験まであと2日。


「さて今日の授業は――」

 座学は一通りやったし、イメージトレーニングかな?


「絵を描いてみましょう」

「へ?」

「商用ギルドの方には話をしておきますので、いつでも出せますよ」

 えっ?

 いやいやいやいやいや!!!

 魔法学校の授業とか、学園長のしごき……もとい個別授業でそれどころじゃなかったよ!


「まさかまだ何も手付かずなのですか? それは困りましたね……」

 困ったのはあたしだよ……。

 あたしの同人本の売る場所を、作ってくれたのはありがたいけども……。


「あの、それはまた今度でもいいですよ……?」

「というと?」

「今はほら、試験の直前ですし」

「だからこそ、今やるのです」

 やっぱこの人の言ってる事意味わかんないよ……。

 あたし、こっちに来てから1ページ、1キャラたりとも描いていないよ?

 まさか今持っているのを出す……?

 散々な評価だったのに……?


「昨日の授業で、私はあなたにイメージ不足と伝えました。その意味がお分かりですか?」

「……まさか、絵を描いてイメージ力アップさせる」

「その通りです」

 なるほど、絵を描けば練習にもなるし売るための同人誌にも出来る。

 さらに魔法のトレーニングにもなるわけだね?


「ま、まぁそこまで言うなら……」

 ならばやらない手はないかな。

 評価が酷かったからちょっと自信ないけども。

 ……ええい、負けるなあたし!

 折角のチャンスなんだ!

 現世じゃ叶わなかった夢がかなうかもしれないんだぞ!


 そう思い自分で自分を励まして奮い立たせると、学園長から受け取った紙とペンで描いていく。


「どうでしょ……?」

 少しの時間を経た後、あたしは1枚の絵を描き上げた。

 内容は、現世で人気のあったアニメキャラ同士が手を繋いで恥ずかしそうにしている、所謂百合だ。


「うーん、これでは駄目ですね。次お願いします」

 えぇ……。

 結構いい感じの出来だったのに……。

 そっか、キャラが悪かったのかな?

 じゃあこのカップリングで……。


 そう思いつつ、2枚目の絵を描く。

 今度も女の子同士だけど、キャラクターは変えてみた。

 あたしはそこまで好きじゃないけども……、どちらもSNSでバズったキャラだし、グッズ化もされてて万人受けしている。


「じゃあこれなら……」

「駄目ですね」

 だが、それも一蹴されてしまった。


「これでどうだ!」

 次の3枚目、今度は人気キャラを追加して人数を増やしてみたぞ!

 人気キャラてんこ盛りだ!

 きっとこれなら!

「いまいちです」

 うぐ、これも駄目なの……。

 な、ならとっておきのやつを……。


「な、ならこれで!!」

 負けじと4枚目を描いて学園長に渡すが……。

「…………」

 ねえ、なんで何も言ってくれないの。

 しかも感動して声が出ないというより、呆れてものも言えないって感じだし。

 ちょ、なんでため息つくの!


「あ、あの」

「何でしょう」

「あたしの絵の何が駄目なんでしょう」

 4枚も頑張ったのに全滅って……。

 何も変なところはなかったはずなのに。

 やっぱり百合じゃ駄目なの?

 でもあたしは百合しか描けないよ?


「あなたの絵は生きてません」

「えぇ……」

 なにそれ、あたしの絵は死んでいるっていうの!

 むうううう!

 そんなん言われても知らないし!


「もしかして、下手……?」

「そうではありません。とてもお上手です」

「な、ならどうして!」

「あなた、この絵に何の思いをのせていますか?」

「え……?」

「ただ描くだけなんて、魔法でも出来てしまいます。私でもほらこの通り」

 学園長はそう言うと、指をぱちんと鳴らす。

 するとあたしの手元に1枚の綺麗に描かれた風景画が出てきた。


「ですが人の描いた絵には、不思議と見た人の気持ちを動かす力があります。あなたにはそれがまるで感じられないのです」

 確かに、学園長の絵はすごい綺麗だ。

 でも言われてみれば、何か訴えるものがないというかなんというか。


 ひょっとしたら、あたしの絵もそうなのかな?

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