33-3
翌日。聖百合教本部近くの誰もいない広場にて。
「はぁ! 勇者の剣!」
戦いは近いって事で、こっそり魔法の練習をしていたんだけども。
「うーん」
なんかこう、しっくりこないというか。
変な感じがする……。
「勇者の槍!」
勇者の力、使えているようで、実は使い切れていないのかな?
それとも、ひなの過去を知っちゃったからかな?
「うーん……」
理由は分からないけども、なんかすっきりしないんだよね。
「はぁ」
これは絵を描くより難しいかも……。
どうしよう?
エレナに相談してみる?
んー、わかるかなぁ……。
「こんな人気のない場所でどうしたのですか?」
「うわあ!」
ひっ、学園長!
急に話しかけないでよ!
というか、なんでここに……。
「私、魔法少女チャンピオンシップに出るんです」
まぁ、ひな関連の話題は避けて。
大会に出るって事だけ打ち明けよう。
隠してても、魔法少女ギルド経由で分かっちゃうからね。
「ほお、ゆきさんはそういうのを苦手だと思っていたのですが、意外ですね」
ぎく、鋭いぞ……。
えっと、うんっと……。
「い、いやあ! やっぱ教祖になるからにはある程度ランク高くないと、ブランディやパトリシア、あと他の魔法少女にしめしがつかないですからねー!」
「いよいよ自覚が出てきましたか、立派ですよ」
ふー!
うまい言い訳出来た……。
あとは学園長から離れないとだけども。
あれ?
これって。
「おや? どうかしましたか?」
…………。
…………。
実はチャンスだったり……?
ええい!
迷うなあたし!
理由はともあれ、大会でいい成績おさめるって決めたじゃない!
「実は、勇者の力があまりうまく使えなくって」
「ほおほお」
「いやえっと、剣とか、槍とか、盾とかは出るんです。でもなんかこう違和感というか、なんというか」
「…………」
「ごめんなさい。漠然としすぎて……」
ひなと一緒に居た学園長なら、勇者の力について何か知ってるかもしれない。
だから敢えてここは、打ち明けてみたけども。
「…………」
なんで黙るの。
めっちゃ真剣な顔だし。
うぅ、やっぱし言うべきじゃなかったのかな。
「明日、エレナさんを連れて私の執務室まで来てください」
「へ? は、はい」
いきなりお呼ばれされてしまった。
しかもエレナ随伴とか。
や、やっぱり変な事言っちゃったからかな……。




