32-7
エレナの励ましを受けて、あたしはすかさず新作を準備する。
木製の机を用意して、辞書のようにぶあつい新作を縦に置いて。
そして……。
「今から昔、この世界は魔王が支配していました」
セフィリアはあらかじめ決められた台詞を読み上げていき……。
「魔王は人々を虐げ、意のままに世界をしていました」
「ふははは! 人間よ平伏せ!」
「きゃあ! 助けて!」
あたしは作品を固定し、エレナは魔法でページを高速にめくっていく!
「おお」
「なんだあれは」
「絵が次々と変わっていくぞ……」
あたしの新作。
それは……。
パラパラ漫画!
「そんな絶望の中、希望が現れました」
「あれは……、勇者!」
「勇者様!」
「勇者は圧政に苦しむ魔王の手先を次々と退治していきました」
「やあ!」
「ぐわあー、やられたー」
もちろん、ただのパラパラ漫画じゃない。
さらにあたしたちはそこからアレンジを加えて……。
「やがて勇者の活躍を知った民衆の中から、共に魔王と戦おうとする者も出てきました」
「勇者様、私も連れていってください」
「共に戦いましょう」
ところどころ魔法で演出したりしているのだ!
「すごい、絵が動いているぞ!」
「まるで実物を見ているようだ……」
「今まで見た事ないわ!」
ふふふ。
みんな感動しているね?
いい感じだ。
「勇者は仲間と共に魔王と最終決戦に挑みました」
「来い……、勇者とその仲間よ……」
「魔王の力は圧倒的で、このままでは勇者が負けてしまうっ!」
「くそっ……」
「勇者様!」
あたしは本当の顛末は知ってるけども。
まさか公言するわけもいかないし、だからここはちょっとアレンジして……。
「だけど勇者は、最後の魔法を使い……」
「みんな、あれを!」
「はい!」
パラパラ漫画の中で勇者と仲間の百合バースト!
演出で、漫画の中の勇者に周りに光をチラつかせて!
「仲間の絆の力を借りた結果、ついに魔王を倒す事が出来ました!!」
「み、みごとだ……」
勇者から放たれる光でどかーん!
崩れていく魔王!
手と手をとりあう仲間たち!
物語はクライマックスから、完結にもっていき!
「こうして世界に平和が訪れたましたとさ、おしまい」
最後に綺麗に物語をしめる!
よし、やり切ったぞ!
演技とか台詞は問題なかった。
ページをめくる速度、演出、ちゃっかり入れた百合展開!
どれも完璧だ。
さあどうだ!




