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31-5

 先陣を切った戦士セレライン、続いて攻めた魔法使いアルキメディス。

 ふたりとも、魔王の圧倒的な力の前に敗れてしまった。


「辛うじて息はありますが……、もう戦える状況では……」

 僧侶ソフィアはぼろぼろになったふたりの治療をしていた。


「ソフィア、ふたりをお願いね」

「……はい」

 その様子を見ていたひなは、そう告げると魔王へと歩み寄っていった。


「来るか、勇者」

「…………」

 そして、彼女の手袋についている宝石が光りだすと、何もない所から自身の衣装と同じ色の桃色の光を放った剣を出し、それを魔王へと振るった。


「やあ!」

「むうっ……!」

 魔王はすかさず持っていたハルバードで防御した。

 しかし、セレラインと戦った時とは形勢が逆だった。


「見事だ」

 魔王はひなの攻撃を受けるたびに後ろへじりじり下がっていく。


「く……」

 仮面で詳しい表情は見えない。

 だけど魔王は、明らかに苦しそうな感じだった。


「ならばこれならどうだ」

 接近戦では分が悪いと悟ったのか、魔王は後ろに少し跳躍して距離を離すと、手の平から火炎弾を生成してそれをひなへ解き放った。


「勇者の盾!」

 ひなはすかさず剣をしまい、自分の体が全て隠れるくらいの大きさの盾を生成する。

 魔王の放った火炎弾は盾にぶつかると粉々に砕けてしまい、ひなへ傷を負わす事に失敗した。


「おお。これなら……!」

 あれだけセレラインやアルキメディスを圧倒していた魔王を、今度はひなが圧倒している。

 その様子を見たソフィアや、治療を受けて目だけは開く事が出来たセレラインとアルキメディスは、期待の表情のまま、ひなの雄姿を見守っていた。


「やあああ!!!」

 そしてそれに答えるかのように、ひなは勇者の剣を振り下ろすと、攻撃を防いでいたハルバードが真っ二つに折れてしまった。


「なにっ!」

「ひな! 今です!! 魔王にとどめを!!!」

 今の魔王は隙だらけだ。

 ひなの力なら容易に討ち取る事が出来る。

 この場に居る勇者パーティの誰もがそう思い、魔王の最期を疑わなかった。

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