31-3
扉を開け、勇者パーティは玉座の間へと入っていく。
「あれが……!」
王の椅子には、黒色の金属で出来た甲冑を纏い、顔を仮面で隠した者が肘をついて座っていた。
「よく来たな」
「魔王!!」
仮面のせいか、魔王の声には雑音が入っている。
視線も隠れていて、どんな人相かも分からない。
そもそも甲冑と仮面のせいで人の形をしているのかもよく分からない。
だが、それでも勇者パーティ全員は分かっていた事があった。
それは、魔王は彼女たちを見下ろしているという事だった。
「……何の用だ?」
魔王には形容しがたい圧倒的な何かを放っていた。
普通の人間ならば見ただけで背筋が凍り、睨まれただけでその場で平伏してしまう、絶対的な何かだ。
「人々の苦しみ、ここで終わらせるぞ!」
「あなたを倒し、この世界に平和を!!」
だが勇者パーティは怯まなかった。
各自は持っていた武器を構え、魔王を見上げて抗戦の意思を見せた。
「……それが答えか」
魔王はゆっくりと立ち上がり、近くにあったハルバードを持つと……。
「来い。捻りつぶしてやる」
玉座から少し離れ、それをしっかりと両手で握りこんで勇者達を迎え撃とうとした。
「魔王!! 覚悟!!!」
最初に仕掛けたのは、今まで寡黙を貫いてきたセレラインだった。
セレラインは背中にかけていた剣を抜き、両手を持つと魔王へ駆けていき。
「やあ!」
そして大きく地面を蹴って跳躍し、自重と共に魔法へ剣を振り下ろした!
「いい筋だ」
その戦士セレラインの攻撃に、魔王はハルバードを使って防ぐ。
武器と武器がぶつかり合うと、玉座の間に激しい金属音が響き、ぶつかった所から火花が散る。
「うおおお!!!」
セレラインはその後も攻撃を続けた。
剣を振り、突き、払い……。
ありとあらゆる角度、速度、力で魔王へ果敢に攻めていった。
「だが所詮は人。余の力には遠く及ばん」
しかしその攻撃は全て魔王のハルバードによって防がれてしまう。
剣とハルバード。
リーチの差が倍以上違い、かつ剣の間合いで戦っているにも関わらず一切有利にならない状況に、セレラインから苛立ちの表情が出てきた。
そして、魔王は全身から不気味な紫色の魔法力を解き放った瞬間。
ハルバードがほんのわずかな時間、動きが見えなくなると……。
「ぐはぁっ!」
「セレライン!!」
今まで攻めていたセレラインの全身が切り刻まれ、勇者パーティの居る方へ吹き飛ばされてしまった。




