31-2
翌日。
人々と魔王軍の全面対決が、魔王城近くの平原にて始まった。
兵士たちは勇者やその仲間たちを信じ、襲い掛かる敵との死闘を繰り広げていた。
一方、勇者パーティは……。
「こっちか!」
「この魔法力、魔王は近いぞ!」
石の床を蹴る軽快な音が響く。
彼女たちは、城内にいた。
「しかし、こうも潜入が上手くいくなんて!」
「みなさまのおかげですね」
元々この戦い、士気は高かったが質も数も人間側が劣っていた。
普通に正面から戦えば、まず間違いなく敗退していた。
ひなの力をもってしても、勝てるかどうかわからなかった。
だからこそ、人々は勇者とその仲間達に希望を託した。
魔王軍の大多数を人々が引き付け、その隙に勇者パーティが魔王へ直接対決を挑み、討ち取る作戦を実行したのだ。
「この扉の先……!」
「すさまじい魔法力、魔王か!」
その結果、魔王城内はほぼ空になった。
勇者パーティの潜入も難なく成功し、彼女たちは一気に魔王が居る玉座の間へ向かう事が出来た。
「開けるぞ」
「ええ」
扉を開ければ、人々を苦しめていた存在と対峙出来る。
その瞬間。
「……待って」
普段は寡黙な戦士セレラインは、難しい表情をしたままそう仲間たちに告げる。
「どうしたの?」
「嫌な予感がする」
「おいおい、怖気づいたか?」
セレラインは決して臆病ではなかった。
戦士という役柄に相応しく、敵と対峙すればひなと共に先陣を切って立ち向かい、死地を幾度と切り開いてきた。
「……かもしれない」
「おいおい……」
だからこそ、彼女の言動には皆が疑問を感じていた。
「…………」
ひなも、うまい言葉を返す事が出来なかったのか、いつもは明るく振舞うにも関わらず今回だけは無言のままセレラインから視線を逸らしていた。
「大丈夫ですよ。私達にはひながいます」
そんな中、ソフィアはセレラインの手をぎゅっと握り、優しい笑顔を見せた。
「……わかった。引き留めてすまない」
その笑顔に勇気づけられたのか?
セレラインは何度か頷きながらそう告げた。
「開ける」
そして、魔王が待っている部屋の扉をぐっと強く押して開けた。




