30-4
「ちょ、なんだ!?」
「皆様、伏せてください!」
セフィリアの咄嗟の指示で、あたしは地面に手をついて転ばないようにしたんだけども。
な、なに!
何で揺れてるの!
「見てください!」
ミカエルが大声だして、今度はいったいなんなの!
そう思いつつ、どうにか顔をあげると……。
「う、うそ」
えっ、今まで壁だったところが上下にぱかって開いていく?
こんな仕掛けだったなんて。
あっ、開ききったら揺れがおさまったね。
よっと、床あんまし触りたくないし立とう……。
「ゆきさん、何かしましたか?」
「ううん! 何もしてないよ!」
そうだよ!
そんなん聞かれてもあたしだって何が何だか!
「反応が遅かっただけじゃないのか?」
なるほど、勇者の力で開けるってのは正解だったけど、開くまでに時間がかかったってわけね。
「多分、別の何かに反応したのではないでしょうか」
「セフィリア、別のってなんだよ」
「先ほど、ゆきさんはひなの名前を言いました。その直後に扉が開いたので、それとか……」
まさかの言葉で反応する扉だったなんて。
確かに勇者の名前がひなっていうのは、かつてのパーティメンバーかあたしたちくらいしか知らない情報だからね。
ん?
ということは。
「セフィリアさんの言葉通りだと、学園長はやはり勇者の事を知っている、関わりがあるという事になります」
そうだよ!
やっぱ100歳は嘘じゃなくって、むかし勇者の知り合いだったとか、身の回りの世話をしたとか、そういう間柄だったんだよ!
「ま、行くか」
「うん」
あたしはそう思いつつも、隠し扉の先を進んでいった。
扉が開いた先は上り階段になっていて、傾斜が急だったので転ばないように気をつけつつ、1段ずつ慎重に上がっていき……。
「また扉ですね」
階段を上って少し廊下を真っすぐ進んだ後に、扉に突き当たってしまった。
「でも、なんか新しいかも……?」
「確かに……、今までの扉は古びていましたが、この扉だけ妙に新しいですね」
「まるで今も使われているって感じだな」
水路入り口の鍵付き扉、船じゃないと奥へ進めない水路、勇者でしか開かない扉、勇者の名前を言わないと開かない扉。
ここまで何重にも入れないようにして、いったい何があるんだろう……。
「開けてみましょう」
おお、ついに扉が開く!
どきどき……。




