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「うーん……。別にあたしじゃなくても、他にもいっぱいいますよね? ミカエルとか……」
「確かに彼女は優秀です。順当にいけば、グランドリリィに選ばれるのは彼女でしょうね」
なんか新しい単語が出てきた。
そういえば、フロリアンナ先生も言ってたような?
一体なんだろ。
「そのグランドリリィってなんでしょ?」
「MA学園の首席にのみ与えられる特殊な称号ですよ」
「ほおほお……」
「あとはグランドリリィ専用の魔法少女衣装・アリスシリーズも与えられます」
「アリスシリーズ……?」
「ここの学生が魔法少女になった時、特別な衣装を各々に与えるのですが、アリスの名前を冠した衣装は別格なのです」
「すごい力があるとか……?」
「はい。着れば自らの魔法力を何倍にも何十倍にも高めてくれます。国の宝物ランク3・アーティファクト級にも指定されるくらいの逸品ですよ」
そんなすごい衣装があるなんて!
確かに首席に選ばれるくらいの魔法少女が、さらに衣装で強くなれば無敵だよね。
それにしても首席に、専用衣装かー……。
あたしには無縁だね……。
「過去のグランドリリィに与えられた衣装はこんな感じですね」
そう思っていた時、学園長は人差し指を空中にかざすと、その先に歴代首席の魔法少女姿が映し出された。
おお!
アリスってだけに、不思議の国のアリスが着ている水色のエプロンドレスがベースっぽいけど、いろいろフリフリだったり、ひらひらだったり、ふわっとしてたりしていて、とても可愛い!
ロリータ趣味とか、コスプレ大好きってわけじゃなかったけれども、この衣装デザインはイイ!!
いいなぁ、こんなの着てみたいなぁ……。
「でもあたし……、魔法使えないし……」
そうなんだよね。
あたし、魔法一切使えないんだよね。
魔法が使えなきゃ首席なんてまず無理だしなぁ……。
「それなら大丈夫です。10日もあれば十分使えるようになりますよ」
「本当かなぁ……」
仮に10日で魔法使えるようになって、魔法力10のあたしが50000のミカエルにどう勝てばいいのやら……。
やっぱあたしじゃあ無理なんだよね。
売れない同人作家が魔法少女とか突拍子すぎるもん。
「なら、私が直接指導して差し上げます。どうでしょう?」
「えぇ!? いいの……?」
「本来はいけない事ですが……。今回だけ特別ですよ。ただし他言無用でお願いしますね」
「うーん」
学園長直々の指導……。
それならいけるのかな……。
「それでも魔法少女としての才が見えない場合は、次の試験でしかるべき結果になるでしょうからね。それまでは騙されたと思ってやってみてもよいかと私は思います」
「う、うーん」
確かに、別に何年もずっと軟禁生活やれってわけじゃないよね。
頑張ってみて結果が駄目だったらそのまま脱落、退学なわけだし。
「……分かりました。じゃあ次の試験まで頑張ってみます」
だからこの人の言う通り、10日だけでもやってみよう。
折角教えてくれる言ってるからね。
それに、もしも首席になれれば、あの可愛い衣装が着れるわけだ。
「期待しておりますよ」
学園長は満足気な笑みを見せたので、あたしも一度だけ頭を軽く下げて笑顔を返した。




