29-1
「セレラインってどこかで聞いた事あるような……?」
「おー、ようやく頭働いてきたな!」
「う、うん」
そりゃね……。
ま、まあ今はそんな事よりも。
うーん、どこだっけかなあ……。
「ゆきさんとエレナさんが学生時代、リゼットをけしかけた貴族……」
「あーー!! そうじゃん!!」
おお、それそれ!
あの時の貴族が確か、セレライン卿って呼ばれてた!
という事は、つまり……。
「つまり、ミカエルに聞けって事だ」
「うんうん」
なるほど。
今までの話をまとめると、伝説の英雄4人のうちのひとりの子孫が、ミカエルってわけだね?
確かに勇者にまつわる何かがあるかも?
うーん。
でももしもそうだったら、勇者の手記を解読してるときに言ってもいいような?
「ゆきさんはまだ起きたばかりですし、ミカエルさんへ会うには手続きが必要です。実行はもう数日後になるかと思います」
「そうだな」
「うん」
そうだね、とりあえずは休もう。
ふたりも元気そうだけど、掃討戦から帰ったばかりだもの。
そんなわけで、あたしは休息をとりつつ次回作を描き、エレナは子供たちの面倒を見つつ魔法の修行をして、セフィリアは父親の仕事の手伝いとかミカエルに会うための手続きとかして、時間を過ごした。
それから3日後。
王族親衛隊詰所内、会議室にて。
おや、今日はウィーンも居る。
まちまちなのかな?
「今日はどのようなご用でしょうか?」
いつ見てもしっかりしてるというか、きりっとしているというか。
それでアリス衣装姿がすごく可愛いんだもん。
同じ人間なのにここまで違うなんて、凄すぎて悔しいとか羨ましいとかそんな感情すら出ないよ。
「実は先日、大規模闇掃討戦に参加してきました」
「ええ、あったみたいですね。あなた方の活躍も聞いてますよ」
やっぱ魔法少女界隈でも有名みたいだね。
というか、あたしたちの活躍ってなんだろ……。
闇に飲みこまれたけど帰ってきたから、奇跡の人とかそういう呼び名かな。
「実はそこで興味深い事を知りまして、その真意を確かめたいのですが……」
そう言うとセフィリアは、顔にかかった長い髪を手ですくうと……。
「世界を救った英雄のひとりが、ミカエルさんの先祖だという事ですがどうなのでしょう?」
スカートの上へ手を置き、いつもの笑顔でミカエルに問いかけた。
「セレラインという名は、この世界では私の家のみなはず。伝承では聞いていましたが、まさか勇者パーティだったとは……」
おお!
なんかあたしたちの予想が当たったかも?




