4-1
最初の試験まであと10日。
赤点は退学処分。
ああああああもう!!!
そんなん魔法使えないあたしがなるに決まってるじゃん!!!
どうしよう。
どうしよう……。
「ねえエレナ、魔法が使える方法を教えて!」
あたしはちょうど二人になった隙を見て、エレナへ相談を持ち掛けてみた。
「魔法が使える方法って……、ゆきは使えないのか?」
「うん……」
「いやだって、あの馬車に乗っていたって事は、故郷が闇に覆われて居場所が無くなった。魔法力の高い奴らなはずだぞ?」
えぇ、そんな設定だったんだ……。
ああ……、だから妙に同情とかされてたわけね……。
エレナはきっと、あたしの両親は目の前で闇に飲みこまれて死んだとか、一人になって貧しい生活をしてたとか、そういう勘違いをしてたのかも。
「じゃなきゃ、好き好んで魔法少女になりたい奴なんていねぇよ」
「え? そうなの?」
すきこのんで……?
あれ、魔法少女って不人気なの?
「だって、フロリアンナ先生みたいな可愛い服着れるし……」
「はぁ? お前、なんかずれてるな? どんな綺麗な格好出来たって、死んだら元も子もないだろ?」
「え?」
「魔法少女になるって事は、世界を飲みこむ闇に立ち向かうってわけだ。つまり死ぬ事だってある……、というか半分以上は死ぬ」
「え……」
「だから居場所の無い奴か、家柄の都合か、物好きな酔狂しかなりたい奴はいないわけだ。まぁ、まともな家なら娘を死地に送るなんてしないけどな。……って、そんな事も知らずに来たのか?」
そういえば、闇に飲みこまれるってさらっと言っちゃってるけど……。
飲みこまれたら、お終いなの……?
死ぬ……、あたしが死んじゃう……?
うそ、うそだよね?
そんな事、誰一人言ってなかったよ?
もしかして、騙された?
魔法少女モノあるあるで、契約した相手にはめられたパターン?
「あ、おい! まだ話の途中だぞ!!」
「またあとでー!」
そう思うとあたしは、考える前に体が動いていた。
かけあしで校内を走り、学園長の執務室へと一直線に向かい……。
「学園長!!」
到着して間もなく、執務室の扉をばーんと勢いよくあけながら叫んだ。
「あら。どうかされたのですか」
学園長はいつも通り、冷静で穏やかだった。
草木の水やりをしていたのか、片手にはジョウロが握られている。
「あたし何も聞いてませんよ! この世界の事とか! 魔法少女の役目とか!」
「お伝えしたはずですよ? 聞いていなかったみたいですね……」
むむ、確かに世界を救うとか、闇がどうとか言ってた……。
いろんな人が立ち向かっても駄目だったのも聞いた。
だけども!!!
死ぬとか危ないとか、そんな事一言もいってなかったよ!!
だいたい、そんな危険って分かってたらあたしやらないよ!!
察せないあたしって……、もしかしてにぶい?
「ちょうど今日の執務は終わったところで、時間も空いてます。お話をしましょう」
「ぜひ!!」
今度こそ抜け漏れのないように、全部聞いてやる……。
そして、本当に危なかったらこんな学校やめてやるんだ!




