27-5
そんなわけであたしたちは、大規模闇掃討戦のメンバーに選ばれた。
その日の夜。
聖百合教本部内、私室にて。
「おめでとうございます。大規模闇掃討戦へ行かれるのですね」
「うん」
あれ?
どこから聞いたんだろう?
耳がはやいね……。
そうだ、あたしよりも先輩だからブランディなら何か知ってるかな。
「ブランディは何か知ってるのかな?」
「行った事ないです。そ、そんなにランク高くないから……」
「なるほど」
もじもじして、どこか申し訳なさそうだ。
部屋に飾ってある花の手入れが終わると、どこからかぬいぐるみを出して口元を隠しちゃった。
「あっ、でも……。ゴシックっていうチームの中にランク1の魔法少女ミレーユさんが居て、その人が凄いってのは知ってます……」
ランク1の魔法少女かぁ。
やっと70になったあたしじゃ雲の上の存在だよね。
知り合いのミカエルですら10だしなあ。
「おおっ、配属拠点が同じところだ。廃人チームだ」
「は、はいじん?」
「あっ、ううん。こっちの話。やっぱ魔法力が凄いとかかな?」
「えっと、魔法で姿を一切見えなくさせる事が出来て、こっそり近づいて闇を倒すんです」
「ほおほお……」
ランク1だから、もっとすごい魔法使えるのかなって思ったけども。
ステルス能力で暗殺かー、意外と地味かも?
いや、だからこそ成果をしっかりとあげられるってわけかな。
……確かに便利かも。
「詳しいね~」
「い、いちどだけ……、一緒にお仕事したから……///」
なんか強そうだし、もしかして当たりかも?
最優秀魔法少女は無理でも、生きて帰ってくるのは余裕そう?
ううん、油断しちゃだめだね。
あたしも頑張らないと。
それにしても、相変わらず照れているブランディが可愛いなあ。
翌日。
第4拠点は都から少し離れていて、馬車を使う必要があった。
だからあたしたちは、商人ギルドの人にお願いして馬車を手配し、それに乗って向かった。
拠点へ向かう道中。
馬車内にて。
「……というわけなんだよ」
あたしは、昨日ブランディから聞いたランク1魔法少女ミレーユの事をエレナとセフィリアに話した。
「なるほど、隠密系魔法少女なんだな」
エレナが面白い造語使ってる。
何その癒し系とか原宿系みたいな言い方……。
「でもすごいですね」
「だなー、姿消せるの便利そうだからな」
「それもそうなのですが……」
「ん? なんだ?」
「今日一緒の拠点で掃討戦に参加するチームプリズムのひとりに、レティシアという方が居られまして」
えっと、一緒に参加するのはゴシックとプリズムってチームだったけか。
という事は、もう片方の廃人チームだね?
「その方は回復系魔法少女でありながら、自らの肉体を強化し格闘術を用いて戦うそうです」
「肉弾系魔法少女か」
そういえば、ミカエルの従者のウィーンも拳に魔法力溜めて戦ってたね?
あんな感じなのかな?
って、だから何でそんな面白造語使うんだろう?
マイブームなのかな。
「まー、確かに回復と攻撃両方出来れば強いよな」
「はい。私は回復しか出来ませんからね。レティシアさんはランク7だそうです」
「へー」
「で、それとランク1のミレーユと何か関係があるのか? 一緒につるんでるのか?」
「特別知己ってわけではなさそうですね。あくまで噂レベルですが」
きっとすごい魔法少女が居るって事を伝えたかったんだろうね。
こ、これだとあたしたち居なくても成功しそう……?
「気になったのは、ミレーユさんが姿を消す能力しか持ってないにも関わらず、ギルドから最高の魔法少女と認定されている事です」
「そら、魔法力が高いんだろ?」
「それもあるのですが……」
セフィリアの表情がどこか曇ったような気がする。
何か思うところでもあるのかな?
「うふふ、何でもありません。今日も頑張りましょう」
「おう!」
「うんうん」
ありゃ、はぐらかされてしまった……。
と、ともかくここであーだこーだ言っても始まらないよね。
頑張ろう、生きて帰ろう!




