26-12
あの事件があってから数日後。
聖百合教本部内、庭園にて。
「まてまてー!」
「きゃっきゃっ」
「おいこら! そっち行くな!」
エレナは毎日、小さい子の面倒を見ている。
今じゃ元々本部内に居た子や、近隣に住んでいる子とも打ち解けあって上手くやってるみたい。
「セフィリアさん、この魔法学についてなのですが」
「どれどれ。ああ、この魔法は、ここをこうして……」
「なるほど、参考になります」
どうやらエレナが連れてきた子の中には、エレナと同じ様に魔法少女を目指す子もいるらしく、入学に備えて勉強をしているみたい。
それで、成績優秀だったセフィリアが先生の代わりをしているってわけだね。
というわけで。
何のトラブルもなく、平穏な日々が続いていた。
ただひとつ、予想外な事を除いて。
「教祖様。こんにちは」
「こんにちは」
あたしを呼びだした魔法少女とランク41の魔法少女が、なんと聖百合教へ入信してきたのだ。
身の回りの事はブランディがやってくれているし、作品はひとりで描けるので、とりあえず他の教徒の人と同じく商人ギルドの手伝いとか、建物内の掃除とかやってるみたい。
今も箒を片手に持っている。
「しっかし、まさか入ってくるとはなー」
本当そうだよ。
あんな事あったばっかりだし、好きでいてくれているけども気まずくてしばらく会わないのかなって思ってたのに。
意外と行動的というか、なんというか……。
「それだけ愛されているという事ですね、教祖様。うふふ」
「う、うん」
別にあたしはそんな愛されキャラではないと思うけども……。
あ、ありがとうね。
「そういえば、人増えたのかな? なんかいつもより多い気がする」
「そら、俺の連れてきた奴らがいるからな」
「それだけじゃありませんよ!!」
「ひっ」
突然商人ギルドの人が会話に乱入してきたし!!
しかも大声で、びっくりしちゃうよ!
「先行販売から、さらに入信したいって人が出てきたのです」
「ほおほお」
「そ・の・結・果! なんと、街の1/3の人がゆきさんの本を購入したという事が、我々の調べて分かったのです!」
「ひええ」
「これは快挙! 空前絶後! もはや社会現象です!! うははははは!!」
「そ、そうだね」
商人ギルドの人は高笑いしながら去って行った……。
それにしても、1/3って。
街の人がどのくらい居るか分からないけど、そうやって言うって事はかなり凄いって事だよね。
なんだか、取り返しのつかないところまで来てしまったような。
ちょっと怖いかも……。




