3-6
「じゃあ次の人……」
お願いあたしを選ぶな……。
選ばないで……選ばないで下さいお願いします!
うぬぬぬぬ……。
「エレナさん」
ほっ、あたしじゃなかった。
ってエレナじゃん!
ひええ、かわいそうに。
「おう!」
と思ったけども、本人は全然やる気だ。
まるで物怖じしていない……。
うーん、出来る……。
「フロリアンナさんよ」
「何でしょうか」
「歌なら何でもいいんだよな?」
「うに」
え、何その前振り。
いったいどんなのを歌おうとしているの。
「貧民街の音楽、お前達に聞かせてやる」
そういうと、エレナはすぅっと息を深く吸い……。
「heyYO! Yeah!」
えっ。
まさかのRAP……?
いやいやいやいやおかしいでしょ!!!
「俺のMAHOU! 威力TAIHOU! 見た目SENKOU! 威力SENRETSU! 敵をSENMETSU!GEKIMETSU!」
中世風のお城っぽい建物の中庭に響くRAP。
なんだこの滅茶苦茶な世界観は!!
なんかいろいろ間違ってるよ……!
「…………」
「…………」
「…………」
ほら、他の人も唖然としちゃってるし。
やっぱそうなるって。
というか、この時代にもあるなんて。
うーん、ファンタジーやって……ないよね。
こうしてエレナのRAPは周囲の人たちを戸惑わせつつ、本人は満足気に歌いきると……。
「変わった音楽ですね」
「だろ? 魂の歌だ」
みんなが呆気にとられている中、フロリアンナさんは至って平然としている。
流石は先生だ、出来る……。
「じゃあ次、ゆきさん」
げげげ!
あの後なのあたし?
うわぁ、めっちゃやり辛いぞ……。
しかもまだ曲決まってないしどうしよ……。
「あの……」
「なんでしょう?」
「後回しにしてもらえませんか? まだ曲決まってなくて」
「駄目です。こっち来てください」
ううう、やっぱりだめかー。
くそーどうしようどうしよう!
うーんうーん……。




