25-10
心の中が冷えていくのに、体は何故か無性に疼いてしまう。
不思議な感覚……。
「ふふふ、これでもう私のものだよ」
「…………」
拒絶、嫌悪、恐怖。
そんな気持ちはまるでなかった。
「ゆきたんには、私がついている。ずっとずっとついているから」
「…………」
何も考えられない。
ただ不思議な感覚だけが、次第に強くなっていって。
心が冷えきった。
意識していないのに、体がびくびくするのが止まらない。
そっか。
あたし、この人のものになっちゃったんだ……。
じゃあ、あたしも闇の一部になっちゃうのかな。
「ゆきーーー!!!!!!」
あぁ、誰かがあたしに呼びかけている。
……だれだっけ?
だれでもいいや。
もう、なんでもいいや。
心が凍えてきると、今度は虚無な感じがどんどん強くなっていく。
目の前も真っ暗になって、もうこの人しか見えなくなって。
…………。
…………。
…………。
…………。
ん?
遠くに見えるのは……ひかり?
だんだん大きくなっていく。
これは……一体!!
「な、なんだこれは!」
「雪……? どうして今この状況で?」
「おい、この地域って雪なんて降らねえだろ!」
「だから分からないって言ってるのよ」
今まで聞こえなくなってた声がまたはっきりと聞こえてきた。
エレナ、リゼット。
2人が何か話している?
「ゆきたん! な、なにを!」
目の前も明るくなって、あたしを襲っていた闇の姿がはっきりと見えるように。
周りも明るくなっていて、空から白い何かが降ってきて……。
ん?
周りが明るくなっている??
「お、おい」
「闇を晴らした……のか?」
そうだよ!
今まで真っ暗だったはずなのに、まるで結界の中に居るくらい明るい。
な、なんで?
何が起こったの……?
そうだ!
こうして寝ている場合じゃない!
どうにか逃げないと!
「うう……、ぐぐぐ……」
「嘘! 私から離れていく!! そんな!」
腕に力も入る。
今までびくともしなかったのに、力を加えたらみるみると離れていく!
これなら逃げられる!!
「あああ! いや!! ゆきたん離れないで!!!」
ふう……。
どうにか抜け出して立ち上がる事が出来たよ。




