25-9
「ぐぐぐ……、よくも……、よくもおおおおオオオオオ!!!!!!」
あたしはエレナに手を引っ張られ、その場から急いで逃げ出した。
闇の表情には先ほどの笑みはなく、鬼のような形相でこちらを向いて襲い掛かってきた!
「あと少しです! もう少しで闇を抜けられそうです!」
ようやく!
もうちょっとで……、逃げ切れるっ!
みんな無事に!
生きて帰って……!
えっ。
「逃がさないいいいイイイイ!!!!」
「きゃあ!」
「ゆき!!」
「つかまった……?」
外の光が差し込んでいる場所へ手を伸ばそうとするが、どんどん離れて行ってしまう。
足が……、引っ張られている!!
「……あと少しだって言うのに」
うわあああああ!!!
ひ、引きずり込まれる!!
光が……、みんなが……!!
「ふふふ、つかまえた……。やっとつかまえた……」
「は、はなして……」
うう、すごい力。
全然離れそうにない。
そうだ、魔法でどうにか!
「離さない! ゆきたんもう離さない!!」
「ゆき!! クソッ、これでもくらえ!!!」
闇の背中に光の玉が当たった?
エレナが助けようとしてくれている!
「ふふふふ、もう離さない……。離さないッッ!!!」
ひっ、でも全然緩んでない!
逃げられない……!!
「離せ!! 俺はゆきを守るんだよ!!!」
それでもエレナは攻撃を止めなかった。
「どいてなさい」
この声。
もしかしてリゼットが魔法で助けようとしている……?
そう思った瞬間、光の粒が闇に当たり周囲を眩く照らしていく。
…………。
…………。
…………。
…………。
「無駄よ! もうゆきたんは私のもの……」
う、うそ。
リゼットの攻撃もまるでびくともしないなんて!!
「さあゆきたん。私とキスしよう?」
ひっ。
闇になった女の人の顔が、だんだん近づいてくる!!!
「うぅ……」
「ううんキスだけじゃない、もっともっと深く愛し合うの。ずっと……これから……」
「い、いやあ……」
は、はなして……!
いやだ、いやだよ!!
あたしはこんなの……いやだ!!!!
「最初は痛いかもしれないし、嫌になるかもだけど大丈夫だよ。そのうち私無しじゃ生きていけなくなるから……」
か、顔が近づいてきて!!
うう、逃げられない!!
もう……、だ、だめえ……っ!!!
「さあ、永遠に私と一緒に……」
「ゆきーーー!!!!!」
エレナの叫び声が聞こえた瞬間、あたしと闇の口づけが成立してしまった。
その瞬間、あたしの頬に温かい何かが伝った感覚と、心の中が凍り付くような感覚に支配された。




