3-5
こうして何故かみんなの前で歌わされる事になってしまった。
他の女の子達は何も言わず部屋から出て行き中庭を目指していく。
その様子から、何の疑問も抱いていないのはあたしでも分かるくらいだ。
「ね、ねえエレナ」
「あ?」
「魔法と歌うって何か関係あるの?」
でもどうしても気になるあたしは、たまたま近くに居たエレナに小声で聞いてみた。
「そりゃあお前、あれだよ」
「ほおほお……」
「わかんね! だはははは!!」
「…………」
「まぁ、全力でやるだけだ! 俺の実力を見せてやるよ」
「う、うん。期待している」
「おう! ゆきも頑張れよ!」
だめだこりゃ。
結局分からないんだ……。
なんだろう、エレナのこの底なしの明るさがうらやましい。
あぁ、行かなきゃ。
置いていかれちゃう……。
あたしは少しの時間脱力した後に、部屋を出て中庭へと向かった。
魔法少女育成学校・MA学園。
その中庭にて。
「うにぅ……Zzz」
フロリアンナさんはすごく眠そうだ。
こくりこくりと船を漕いでいる。
でもすごい魔法少女なんだよね……。
うーん、わからない。
「じゃあ、名前を呼ばれた人から歌ってください」
いよいよ始まった……!
あたし上手く歌えるのかな……。
ってあれ?
歌ってくださいって、何を歌うんだろう。
「先生!」
あたしはそれを聞くべく、思いっきり手をあげて呼んだ。
「なんでしょう、ゆきさん」
「歌うって何を歌うのでしょうか?」
「お任せします」
「お、おまかせ……?」
「うに」
フロリアンナ先生はこくっと一度だけ頷く。
やだ、すごく可愛い!
……いやいや今はそうじゃない、おまかせって何でもいいって事だよね?
うーーーん。
一番難しい……。
「他に質問がなければ始めます。じゃあ――」
「はい。~♪」
何を歌うのが正解なんだろうか。
といっても、あたしが知ってる歌なんてアニソンくらいしかないし……。
まさか異世界でアニソン歌う……?
いやいや絶対に浮くでしょ。
「次は――」
「はい。~♪」
あたしは、他の人の声が聞こえないくらいに考えた。
考える内容は、もちろん選曲だ。
だけどどんなに考えても、脳内に流れるのはアニソンや特撮、戦隊もののテーマソングばっかりだ。
ど、どうしよう。
「次、ミカエルさん」
「はい」
おお、いつのまにか魔法力50000の順番になってる。
どれどれ、どんな歌か聞いてみよう。
「~~♪」
すごい……。
なんて綺麗な歌声……。
現世だと間違いなく天使の歌声とか言われて大ヒットしてるよ。
くそ、何でも出来るとかなんかむかつく……。
「~~♪ ふぅ」
彼女が歌いきった後は、みんなその歌声に魅了されていた。
「……流石ですね」
「いえ、大したことはありませんわ」
フロリアンナ先生も褒めている。
うーん、さすがは50000かー……。
てかこんなすごい人の後って、やり辛いよなぁ。
うう、どうかあたしが選ばれませんように!