24-5
聖百合教の教徒視点
即売会があった日の夜。
とある民家内にある部屋にて。
「はっ……、はっ……」
…………。
…………。
…………。
…………。
「はぁっ、はぁっ……」
…………。
…………。
…………。
…………。
「んんっっ……」
…………。
…………。
…………。
…………。
「はぁ……、ゆきたん……」
私はベッドの上で仰向けになると、聖百合教の教祖であるゆきの自画像絵を再び見た。
あぁ、ゆきたん。
私のゆきたん。
あなたはこんなにも可愛いのに、どうして私に振り向いてくれないの?
こんなにも私はあなたの事を愛しているのに。
こんなにも私はあなたで感じているのに。
あなた無しではもう、生きられないのに。
でも、それは仕方がない事。
だって私は魔法少女でもなければ、貴族や王族でもない。
ただの平民の教徒にすぎない。
「…………」
商人ギルドの人や、他の教徒の話だと、ゆきたんは巫女であるエレナとキスをしたらしい。
なんであんな女とキスしてるの?
どうして私にはキスしてくれないの?
こんなにゆきたんのこと、好きなのに、愛しているのに。
「はぁ……」
でも、仕方ない。
私はただの平民教徒。
折角直接話す機会があったのに、緊張して何も出来なかった臆病者。
情けない……。
…………。
…………。
なんだろうこの感覚。
すごく胸がもやもやしている、嫌な感じ。
でも、その気持ちはいつもそうだった。
ゆきたんの事を思えば思うほどそうなってしまう。
だから自分で自分を慰めて静めていた。
ゆきたんが私の事を好きって言ってくれて、私の手をとって、私とキスして……。
そんな事を頭の中で想像しながら。
そして今日もそれをやった……けれど。
どういうわけか全然おさまらない。
どうしてなの?
「えっ?」
な、なにこれ!
床から黒いもやもやとしたのが湧いて出てきて……。
も、もしかしてこれって、世界を覆おうとしている闇!
「ひいっ!」
やだ、ベッドの上にもあがってくる!!
なんで?
どうして?
ここは結界内で、魔法少女も見回っている!
なのに、闇がこんなところに!!!
「た、たすけて!!」
このままじゃ、闇に飲みこまれてしまう!!
闇が……、闇が来ちゃう!!!
「たすけて!! たすけて!!! 誰か……たすけ――」




