23-6
「ふう……」
あたしは一通り、勇者の手記の翻訳結果を読んだ。
中身はまぁ、勇者がパーティメンバーととても仲良くしている事ばかりで。
あたしのネタ帳としては最高なんだけども。
その、今求めている内容では……ないかな。
「……///」
「なんで赤くなってるんだ?」
「い、いいでしょ! もー!」
そりゃこんな百合本読んだら赤くもなるよ!!
驚きだよほんとに……。
「中身は見ての通り、勇者とその仲間たちの日常が書いてあります」
日常。
まぁ、日常だよね、うん。
「なーんだ。ただの日記かー」
「残念ですねえ」
エレナとセフィリアが残念がっているのは分かる。
あたしだって(学園長の秘密という意味で)新しい情報が手に入らないのは残念だよ。
「疑問に感じませんか?」
う、ミカエルの表情が真剣だ。
疑問って……、なんだろう?
まさかシチュエーションとか、雰囲気とか……?
「あなた方はこれを学園内の隠された場所で見つけましたよね? こんな普通の日記が、どうして隠されているのか」
いや、普通の日記ではないと思う。
百合本描いているあたしですら、赤面しちゃうくらいいじらしい内容だもの。
ってそうじゃない。
んー、確かに隠してあるのはなんでだろうね?
…………。
…………。
あ!
もしかして!!
「内容が見られると恥ずかしいから……?」
「あー、なるほどな」
「確かに……」
ほら、年頃の子が痛い日記とかブログとか書いて、大人になって読み返すとじたばたしたくなるやつ!
あれだよ!!
勇者っていうからもっと高貴な感じなのかなって思ったけども、意外と人間臭いというかなんというか……。
「その可能性も無いわけではありませんが、私はこう考えます」
みんな納得してるけど、ミカエルは真剣な表情だ。
手まで組みだしたし、一体なんなんだろう。
「この何の変哲もない日記には、何か重要な事が隠されているのではないかと」
う、うーん。
あたしはただの日記もとい百合本だと思うけども。
暗号でも隠されてるんかな……。
「で? その重要な事ってなんだ?」
「そうですね……」
やっぱ誰も分からないみたいだ。
そりゃそうだよね。
じゃあここからはその隠された秘密を調べるってことかな?
「ミカエル様、そろそろお時間が」
「今日はここまでにしておきましょう。また時間が取れ次第こちらへ伺いますので、では」
そう言うとミカエルは、部屋を出て行ってしまった。
その後、あたしはもう1度読み直した。
エレナやセフィリアも一緒になって読んだ。
けども、やっぱり何も見つからなかった。




